限りある時の中で

□アルベルト&アルバート「父の遺言」
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久しぶりにやって来たガーランドは相変わらず人が沢山いた。そして、道行く人の殆どが僕の方を振り向いて顔をじっと見たり、あるいは話しかけてくる。

(皆父の事ばかり話してくるなぁ…)

勿論嫌ではない。でも、まだまだ父の足元にも及ばないと実感してしまう。

(仕方ないよね。でも…そんな凄い父が母と愛し合って僕達が生まれたんだ。どんな発明品よりも素晴らしい、比べ物にならないくらい貴方達は素敵なのよって母さんがよく言ってくれた)

だから僕は真っ直ぐ胸を張って生きてこれた。学校にいる時も父と比べられる事も数え切れない程あった…中には酷い事を言う人も居た。泣きたいことも沢山あったけど……僕達の顔を見ることなく亡くなった父の無念さを思えば悪口なんて全く取るに足らない下らない事だって思え我慢出来た。

(さぁ、日が沈む前に実家に行こう)

途中で母の好物のミィという食べ物を買ってから高級住宅街の一等地に建つ実家に向かった。





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