限りある時の中で

□アルベルト&アルバート「父の遺言」
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 ガタン ゴトン…

「しかし、珍しいね。アルベルト様が一人で王都に行かれるなんてねぇ」

鉄馬車の車掌であるクレハが僕の隣にやって来て話し込んでいる。

「どうしても行かなければいけない用事が出来て…」

「ふぅん。詳しく聞きたいけど…」

「……クレハさんにも、アンジェラにも言えない事です」

これは僕とアルバートで解決しなければいけない。他人や女の子であるアンジェラを巻き込んじゃ駄目なんだ…。

「そ。じゃあ聞かないわ。
それにしても、アンタはほーんとアルバス様にそっくりねぇ…」

「父にですか?」

「えぇ。声もだけど姿形も。唯一違うと言えば此処だけかしら」

そう言ってクレハは僕の耳を触る。

「アルバス様は感情を抑えるための魔宝石のピアスを沢山していたからねぇ」

それは知っている。父のしていた魔宝石のピアスが博物館に飾られていたし、母さんにも聞いたことがあった。
でも僕はそれらを身に着けていない…どうしてかと言えば、僕の目には蛇族全員が持っている邪眼という力がないから。あとは父さんが魔宝石の力を使わないと使えなかった魔法を使える事。

「まだまだ父にはかないません」

そう言って僕はクレハから視線を逸らすと鉄馬車の前に目を向ける。

「アンジェラはどうですか?」

「あぁ、あの子はいい子よ。もうこの鉄馬車の運転も完璧だし」

「そうですか。それはよかった」

今乗っているこの鉄馬車は妹のアンジェラが動かしている。前にクレハが動かしていたときとなんら変わりない、快適なものだ。

「会っていかないの?」

「はい。今は……全部終わったら、会いに来ますよ」

「そ…なんだか知らないけど、あんま無理はするんじゃないわよ?」

「えぇ。有難うございます」

ガーランド駅のホームに鉄馬車が停まり、僕はクレハに礼を言うと鉄馬車から降り、実家に向かって歩み出した。

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