‐gintama‐

□パトロール
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『土方さんと二人で見回りなんて珍しいですねー』

「あ?」

『わざわざわたしをご指名だなんて本当わたしのこと大好きですね土方さん』

「ふっざけんな!テメェが巡回中いつもサボってフラフラしてるっつーのを聞いてこっちはこうして目ェ光らせて見張ってんだよ!」

『いや、いくらわたしが可愛いからってそんな真横で瞳孔かっ開けて熱い視線をおくられても困ります(チッ…ザキの奴め)』


江戸の町を黒い隊服を着た二人肩を並べて歩きながら、さっきからその鬼のような顔をこっちに向けて(おっかねー)めっちゃガン見してくる土方さん。(前見て歩こうよ)
やだなぁ…そんな近くで鼻の毛穴まで見られちゃってるんだろうなぁ…。
ていうかわたしの観察はいいからちゃんと仕事してよ。ずっと眺めてたいのはわかるけどさー。


「誰が!!ハッ倒すぞ!!」

『やだっ、こんな公衆の面前で押し倒すだなんて…』

「言ってねェエエエ!!」


…なんか汁的なもんが唇に付着して飛んできたんですけど。


『まぁでも土方さんとこうして一緒にパトロールって久々ですね。嬉しいですわたし』

「俺はちっとも嬉しかねェ。ったく無駄な仕事増やしやがって…」


ハンッ、と鼻を鳴らしてブツブツ言いながら胸ポケットからマヨボロを取り出し口にくわえマヨライターで火をつけるニコチン中毒。
わたしが言うのもなんだが、仕事中に堂々としかもこんな道端ですぱすぱ煙草を吸う奴(しかも“一応”警察)があるか。


『もうっ、ツンデレなんだからトッシーは』

「どこが!?つかトッシー言うな!!俺お前の上司だから!!」

『土方さんひまー』

「聞けよ!」

『ひまだおー土方さんー』

「知るか!」

『まーひーまーひー』

「うるせェ!」

『ひーじーかーたーさーんー』


土方さんの腕を掴んで、両手でブンブン振って揺らす。


「ガキかお前は!灰が落ちんだろ!ちゃんと目ん玉ひん剥いて巡回しやがれ!」

『ねぇ土方さん、デートごっこしましょうよ!』

「ハァア!!?」

『見ての通り江戸は今日も平和です。ラブ&ピースです。刺激のないつまらないパトロールもこれでちょっとは気が紛れて楽しくなりますよ。デートごっこしながら帰りに大江戸スーパーに寄って土方さんのストック用のマヨネーズ買ってそして屯所に帰りましょう!はいこれで今日の仕事は終わりです!』

「誰がやるかァァんなふざけたこと!!マヨネーズは買って帰るがな!」


ちぇー。マヨネーズで釣れると思ったのに。


『つまんなーい』

「あぁ?」

『ノリ悪いなぁ土方さん。総悟だったらいつもノリノリでやってくれるのにー』


一度だけふざけて(本人はガチだったんだろうけど)鎖が付いた首輪を目の前に差し出されて(ド)エス(S)コートを要求してきたこともあったが…。
もちろんさすがにそれは拒否った。


「巡回中になんっつー遊びしてんだお前らは!!仕事ナメてんのか!!」

『俺がナメてんのは土方(つちかた)さんだけでさァ』

「はぁあ!!?“つちかた”って誰だコルァァ!!」

『と、総悟が言ってました』

「何ィイイ!!?」

『あれ?結構頑張って総悟の真似してみたんですけど似てませんでしたか?』

「知るかァ!!大体お前はいつもいつも…」

『あ!銀ちゃんだ!』


横であーだこーだ一人で騒いでテンソンあげぽよの土方さんの存在をシカトして、前方から死んだ魚のような目をしてダルそうに歩いてくる銀髪の天然パーマの男を見つける。


『ぎーんちゃーんっ!』

「おいお奈美待て…!まだ話は…!」


その人物目掛けて駆け寄っていき、ガバッと勢いよく抱き着く。


「うおっ…ビックリした、お奈美か」

『銀ちゃん何してんのー?』


抱き着いたまま目の前のやる気のないとぼけた顔(失礼)をニコニコと対照的に眩しい笑顔で見上げる。


「何って月曜だからコンビニにジャンプ買いに行くんだよォ。お奈美はまたサボリかー?税金泥棒かコノヤロー」

『ブッブー違いますぅーちゃんと見回りして絶賛パトロール中ですぅー』

「お、珍しいこともあんだな」

『まあね』

「なんでドヤ顔だ」

『…いいなぁジャンプ、』

「ん?」

『わたし達マガジンしか読めないから…また銀ちゃんとこにワンパーク読みに行ってもいい?ギンタマンはいらないけど』

「おーおー可哀想に。来い来い、いつでもジャンプ読みたかったら銀さん家に来なさい」


そう言ってゴツゴツした大きな手で頭を撫でてくれる銀ちゃん。


「おいお奈美!てめぇマガジンを馬鹿にしてんじゃねェ!そしてそいつからすぐに即刻直ちに離れろ!」


別に馬鹿にはしてないけど、屯所内でマガジン以外の雑誌を読んだら切腹だなんてちょっとその局中法度を考えた人は頭おかしいな、とは思う。


「聞こえてんだよォオ全部!!切腹だコルァア!!」


相変わらず二言目には“切腹”だの“斬る”だのテンソンがイカれたお人だ。どんだけhighのあげぽよなんだよ。


「だから口に出して言ってっからァアア!!」

「あれ?今日は総一郎くんと一緒じゃねェのォ?なんか瞳孔開いてる人がめっちゃこっち見てくるんだけどォ」

『うん。なんかわたしのこと大好きみたいで一緒に付いてきたんだよね。総一郎くんは今頃屯所のどっかで夢の中だよ、多分』

「お奈美!!」

『それにしても銀ちゃんの体って見た目と違って意外に筋肉マッチョだよねー』


ペタペタと服の上から確認するようにボディタッチする。


「そりゃあ銀さんだって毎晩フラフラ飲み歩いてるばっかじゃなく日々体も鍛えてるからなァ〜ムラム…ムキムキよ」

「ハンッ嘘つけ」

『そうなんだぁ』

「おいお奈美ちゃんよォ━━━この体に抱かれたい気持ちもわかるがあんまそんなとこまでベタベタ触られると…」

『硬ーいっ(筋肉が)』

「そうそう銀さんの銀さんが硬くなっちゃうからね」

「ヲイイイイイイ何言ってんだァアアアアア!!!」

『わたしね、銀ちゃんのガッシリしたこの腕が好き!』


“男”を感じさせる銀ちゃんの太く逞しい腕にぎゅうう、としがみつく。


「え、何、嬉しいこと言ってくれんじゃねェの。お奈美は腕フェチか?血管フェチか?」

『銀ちゃんフェチ!』

「ちょ、おいおいマジかよお前本当可愛いなァおい。あんな瞳孔開いてる危ねェ奴がいるとこなんかとっとと辞めてマジで俺んとこ来いよ。お奈美だったらいつでもウェルカムよ。むしろ住み込みで毎日銀さんを癒してくれ」

「ふっざけんなテメェ!人が黙って聞いてりゃ何勝手なこと言ってんだ!何がウェルカムだ!何が癒してくれだ!人んとこのモン無断で引き抜こうとしてんじゃねェ!」

『うーん、万事屋って収入安定してなくて給料もろくにくれないしほぼニート状態でフワフワしてるって神楽ちゃんが言ってたからなぁ』

「ゔっ…」

「フンッ」←勝ち誇った顔

『でも神楽ちゃんと毎日一緒にいれてシェアハウスできるっていうのは楽しそうだし憧れちゃう!』

「いや、銀さんもいるからね…むしろ銀さんの家だからね…」

『あと定春くんというオプション付きも魅力的かも。一度でいいからわたしワンちゃん飼って毎日モフモフしてみたかったんだよね〜』

「おーいお奈美ちゃん…?(つうかワンちゃんてか化け物だからアイツ。むしろお前の○○○で俺の○○○を毎日モフモフしてくれ)」←昼間っからエロいことしか考えてないマダオ

『ん?なあに?』

「住み込みで万事屋に来てくれたらお奈美が好きな俺の肉体美毎日見放題だぞ!むしろ銀さんの全てをお奈美に魅せてあげるからァ!銀さん脱いだら(色んな意味で)本当スゴいんだからァ!な!だから来い!俺んとこに!」

「キモチワリィーんだよテメェは!!何氣志團気取って“俺んとこ来ないか?”みたいに言ってんだよ!!下心見え見えなんだよ!!死ねゴルァアア!!」

「…さっきからうるせェなギャーギャーと。テンソンあげぽよですかコノヤロー。どんだけhighなんだよおい。薬やってんじゃねェの?」

「はぁあああああ!!?」

「お奈美ちゃんとこのお兄たまちょっと過保護すぎるんじゃねェのォ?」

『そうなの。いくらわたしのことが可愛いからってちょっと限度ってものがあるのよね。お兄たまのシスコンも大概にしてほしいわ』

「誰がお兄たまだ!!誰が!!シスコンってなんだお奈美!!いつ誰がお前の、」

「あ・・・お奈美」

『なあに?銀ちゃん』

「お前の柔らかい胸がさっきから俺の腕にムニュムニュ押し付けられて銀さんのギンギンさんが疼いてきちゃったわ…」

『えっ、』

「いやそれだけじゃねェよ?ちょっと脳内でもお奈美との一つ屋根の下ラブジュース…じゃなくてラブライフをイロイロと妄想…いや想像してたらだなついつい…」

「フ、フザけんなテメェエエ!!こんの変態クソ天パ野郎がァアァアアアアアア!!」


───直後、瞳孔を全開にした土方さんに無理矢理銀ちゃんから引き剥がされ、そのまま引きずられるようにして銀ちゃんにバイバイも言えずにその場から連れ去られました。










『ねーえ、さっきから何プリプリして怒ってんの土方さん』


ツカツカ先を歩いてく土方さんの後ろを小走りで追いかけてついていく。


「怒ってねェ!お前が無頓着すぎんだよ!!」


…言ってることメチャクチャだよこの人。


『銀ちゃんが勃っちゃったから?』

「ブッ…!おまっ、そ、そういうことを女が軽々しく口にすんじゃねェ…!」

『だって男の人の生理現象なんだから仕方無いよ。近藤さんだってムラムラしちゃったときよく腰屈めて背中曲げてるじゃん』


三十路手前のもういい歳した大の大人が。自分の上司ながらお前はゴリラか!…じゃなくて中学生か!と言いたくなる。(どんな間違えだ)


「ブハッ…!ゴホッゴホッ…!」←咳き込む

『総悟だってデートごっこしてるときたまに勃ったとか普通に言ってるよ?』

「んなっっっ…!!!」←硬直

『どうしたんですか?おかしいですよさっきから土方さん』

「ちょっと待てェェ!!おかしいのお前ェェ!!お前らそのデートごっことやらで一体ナニやってんだァァ!!」

『やだぁ土方さん、もしかしてエッチなこと考えちゃってる?いやんっ』

「そりゃ考えんだろォォ!!勤務中に勃った勃たないだの聞きゃあァァ!!」

『まーまー、ほら、もうそんなどうでもいい話はやめてわたし達もデートごっこしながらパトロールの続きやりましょ?』

「はぐらかすなお奈美!場合によっちゃお前も総悟も━━━」

『痛っ』


突然その場にしゃがみ込んでうずくまる。


「あ?」

『土方さん…痛いっ…』

「は?なんだってんだ急に」

『靴擦れしちゃった…皮が捲れて痛くてもう歩けない…血も出てきてる…』


キューンと捨てられた子猫のような潤んだ瞳で前方にいる土方さんを見上げる。


「ったく…鈍くせェな」


ほらね。そうため息をつきながらもわたしの元にいつどんなときでもきてくれるなんだかんだ甘く優しい土方さん。


「ほら、掴め」

『わたし土方さんの引き締まった二の腕も大好きですっ!』


差し出してくれた手をスルーしてその先のガチッとした二の腕に飛びつくように、ぎゅううう、と力いっぱい両手でしがみつく。


「!!、なっ、ちょ、お奈美てめぇ…!」

『ふふっ』

「靴擦れっつーのは嘘か!?」

『土方さんって本当わたしのこと大好きですよね!』

「は、はぁああ!?」

『わたしも土方お兄たまのこと大好きですっ!』

「だ、だだ誰がお兄たまだ…!」

『ひっじかたさーん!フフッ』

「ちょっ、お、おい、離れろお奈美…!暑苦しいだろうが…!」

『いやですー』

「ふっざけんなっ…!マママジでお前そそそれ以上ベタベタくっつくな…!って聞いてんのかオイ…!(モロに当たってっからァアァアァア)」


この後、大江戸スーパーで土方さんのストック用マヨネーズを大量購入して(可愛くおねだりしたらジャイアントコーンとハッピーターンも買ってもらえた)仲良くデートごっこしながら屯所まで一緒に腕を組んで帰りました。(わたしが無理矢理くっついてただけど)

江戸は今日も平和でした。


END(2012.04.07)




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