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□ポニーテールとシュシュ
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「・・・・・・え!!?妖精!!?」
「は?」
「・・・ハッ!いや、お・・・おお驚いた・・・!!ナマエちゃん・・・ナマエちゃんだ!!間違いない!!なんて人騒がせな美しさ・・・俺は今君に初めて出会ったときの衝撃を思い出したよ・・・!!」
「はあ、」
突然の奇行(メロリンモード)に意味がわからないといった表情で眉をひそめるナマエ。
「さっきとは違ってその艶やかな麗しい髪をセットアップにしたんだねぇ〜ぐふふ」
「え、あ、まあ・・・」
昼食後、あまりに蒸し暑く欝陶しかったので(現在夏島の夏島を航海中)束ねた長い髪を高い位置でポニーテールにアップしてピンクの水玉のシュシュを付けた。
・・・そう、ただそれだけのこと。
そう言えばサンジくんと初めて出会ったあのときも今日みたいな暑い日でこんな髪型してたっけ。
「ぬうおおおおおお!!!ナマエちゅああああああん!!!」
「うわっ!?」
急に目の前でどでかい奇声をあげないでいただきたい。しかもその顔で。びっくらこいて心臓に悪いわ。まじで。
びくっと肩を揺らし一歩退いて彼との距離を取って自分の胸にそっと手を当てる。
「ナマエちゃん君はなんていつも魅力的なんだぁぁぁ〜!!その神秘的な存在はまるで妖精そのもの・・・俺のティンカーベルになってくれ〜〜〜!!」
イ ミ ガ ワ カ ラ ン
片手を取られ“メ〜ロリンメ〜ロリン”とその場に立て膝をつく既にどこかにイっちゃってるサンジくん。
「・・・はぁ、」
暑いから喉を潤しに大好きなアイスココアを作ってもらおうとキッチンにやって来たら、また“これ”だ。
いつものサンジくんのビョウキが始まった。
「ああ・・・そんな大胆に髪を一つに束ねる美しさが留まる所を知らないナマエちゃん・・・一体君はどれだけ俺のハートを惑わせるプリンセスなんだ〜〜〜!!」
確かにわたしは“めんどくさいから”という自分に対しての言い訳で今までナミみたいに髪をいじったりアレンジしたりとか自慢じゃないけどあまりしたことがなかった。
でもだからと言って別にそこまで騒ぐほどのことでもないだろう。
現にさっきここに来るまでの途中ゾロとすれ違ったが髪型についてガンスルーだった。(当たり前っちゃ当たり前だけど)
髪を一つに束ねただけで大胆もクソもあるか。
「ポニーテールのナマエちゃんも素敵だぁぁぁ!!」
「・・・はいどうも」
「そして好きだぁぁぁーーー!!!」
・・・正直どうでもいい。
毎度よくそんな飽きないなぁ、とむしろ女好きもここまでくると彼に感心さえ覚える。
それよりもわたしがここに来た用件を早く言ってもいいだろうか。
「あのね、サンジくんっ、」
バンッ!!!
「ナマエ!一緒に遊ぶぞ!」
「てめぇクソゴム・・・!俺とナマエちゃんの愛のスウィートタイムを邪魔しやがって・・・!」
「何言ってんだお前」
いきなりドアを勢いよく開けてルフィがキッチンに乗り込んできた。
言いかけてた言葉はかき消されたが正直このタイミングでルフィが来てくれてよかった。
このまま我を失って暴走したサンジくんとこの空間に二人きりなんてさすがに少々キツイもんがある。
サンジくんには悪いがわたしは小さくホッと安堵の息を吐いた。
「それになんだその態度は!来て早々まるで獣かのようにお前はレディに対してのマナーがなってねェ!」
獣はお前だ。
第一ルフィにそんなもんあるわけなかろう。あったらキモイわ。
「なんなんだよ一体。俺はナマエと遊ぼうと呼びに来ただけだろ」
「レディの変化にも気付けねェお前にナマエちゃんと遊ぶ資格なんかねェ!」
わたしと遊ぶのに資格がいるのか。
「お前が決めんな!俺はナマエと一緒に甲板でゴロゴロして遊ぶって決めたんだ!」
えっと、この場合わたしに拒否権はないのか。
しかもそれは“遊ぶ”というより“昼寝”ではないだろうか。
勘弁してくれこのクソ暑い中わざわざ全身に紫外線浴びるなんて乙女の自殺行為じゃない。もはや拷問でしかない。
「お前は今のこのナマエちゃんを見て何も思わないのか!何も感じないのか!何か言うことがあんだろうが!」
「ナマエがどうしたってんだよ??」
不思議そうにわたしの顔をじっと覗き込むルフィ。
そして何を思ったかわたしの額にぴたっと自分の手のひらを当てる。
「あちぃー」
「いや暑いだけで別に風邪はひいてないからねわたし」
「んー・・・むー・・・ぬー・・・」
「・・・」
360度ぐるぐる回って色んな角度からルフィにまじまじとチェッキングされる。(ちょっと照れる)
本人は無自覚だろうが途中スカートの中をしゃがんで覗いてこようとしたときはわたしのグーパンよりも早くサンジくんの強烈な蹴りがすかさず入った。
「なんだよー。別にいつものナマエと一緒だぞ??」
そりゃそうだ。
わたしはいつものわたしと一緒だ。
むしろたかが髪型一つでそこまで食いついてくるサンジくんの方が異常である。
ましてやこの鈍感ルフィにこんなこと聞くこと自体間違ってる。
この無頓着男が女のちょっとした変化に気付くはずがない。
そんなことよりも今は・・・
「あの、わたし喉が渇いて、」
「お前の目は節穴か!その目は飾りか!てめェそれでも男かルフィ!」
「当たり前だァァ俺は男だ!ふざけんな!」
さすがの能天気船長もそこまで一方的に言われてお怒りになられた。
そりゃあどう考えてもサンジくんが理不尽過ぎる。
そしてわたしの声は誰にも届かない。喉が・・・喉がぁぁぁ・・・!
「ナマエちゃん許してくれ・・・!俺の不甲斐なさのせいでこのクソ野郎の無礼な態度を・・・!」
「いやわたしはそんな全然気にしてないから。むしろどうでもいいから」
アイスココアをくだちい。
「くっ・・・なんて優しいんだナマエちゃん・・・!まるで女神のようだ・・・ハッ!そうか・・・ナマエちゃん君は本当は女神だったんだね・・・!!いや・・・その美しさからして俺はそうなんじゃねェかって前々から・・・」
全くもってどうでもいいわ。
「ん?ナマエお前頭になんか付いてんぞ?」
「へ」
「ほらコレ」
「え、ああ、これね」
やっといつもと少し違うわたしの髪の変化に気付いたのか、頭(正確にはシュシュ)を指差してくる。
「これは髪を束ねるときに使う物でシュシュっていう髪飾りみたいなもんよ」
「しゅしゅ?」
「そう。今日暑いからね」
「なんだそれ変な名前だなー」
「そうじゃねェだろ!!他に何か言うことねェのか!!この人類最強級に可愛い可愛いポニーテール姿のナマエちゃんを!!」
「何言ってんだサンジ。ナマエはいつもカワイイだろ」
「え・・・」
「なっ、お前・・・!そんなクソわかりきった常識的当たり前のことを・・・!」
「ル、ルフィ・・・!」
ぽっ、と赤く染まる頬に両手を当て押さえる。
「もちろんそれを前提でに決まってんだろこんのクソアホゴム!!地の果てまで蹴り飛ばすぞ!!」
「な、なに怒ってんだよサンジ・・・!」
「海の藻屑にしてやるゥゥゥ!!」
「ぎゃー!」
「待てルフィイイ!!」
「助けてくれナマエー!」
がばっ
「てめェェ・・・これ以上更に俺を怒り狂わせる気か!!俺のナマエちゃんから即刻離れやがれ!!今すぐにだ!!」
「イヤだ!ナマエはお前のじゃねェだろ!」
「ルゥゥフィイイ・・・!!!」
ナマエの近くにいればサンジの蹴りが飛んでくることは絶対ないとナマエにタチ悪くも抱きつく。
しかしサンジにとっては悪循環でしかなく更に怒りに満ちあふれる。
「・・・」
まさかルフィに“カワイイ”だなんて言われるなんて・・・え、やだどうしよう!だってあのルフィよ!?そんな人類滅亡級にありえないことルフィの口から言われるなんて今の今まで鼻クソたりとも思ってなかったからやややばい普通に嬉しいっっ・・・!むしろなんかサンジくんありがとうございます。サンジくん様々だ。サンジくんに感謝しなければ。サンジくんあざーす。
当のナマエは余程先程のルフィの発言が嬉しかったのか尚も両手を顔に当てたまま石化して固まっていた。
「(何やってんだこいつら・・・)」
そんなカオスな三人をトレーニング休憩で水分補給しにキッチンへやってきたゾロは冷めた白い目で見るのだった。
END
(ちょっと聞いて二人とも!ルフィに“カワイイ”って言われちゃった・・・!)
(あっそ)
(ふふっよかったわね)
2010.09.24 来実