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□何様俺様外科医様2
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「ナマエ」
『…な、なに?』
ドクン…
ドクン…
ドクン…
「今日のスカートは昨日より1.5cm丈が長いな」
『………』
突然深刻な表情をしていつもの低音ボイスより更にワントーン低い真剣な声で一体何を告げられるのかと思いけりゃあ…うん、まあいつものことだった。変に構えて損したわ。乙。
「俺は昨日の方が好みだ」
『あんたの場合デザインとか関係無くスカートの長さがでしょうがこの変態』
そんなお前の好みなど知ったこっちゃない。全くもってどうでもいいわ。フンッ。
「あ゙?」
『何か間違えでも?』
嫌味たっぷりの笑顔でニッコリ笑ってみせる。
「…ほう、そんなに俺に調教してほしいか。よしいいだろう」
『…は?』
「お前のその主人に対しての反抗的態度をお望み通りベッドの上でしつけてやる。覚悟しろ」
『“変態”取り消しますごめんなさい“せんちょー”』
私はいつからこの人のペットになったのだろう。あくまでも肩書きは美人秘書のはず。…え?美人は余計だって?うっさいわね!私だって色々とストレス溜まってんのよ!しゃんなろー!
『はぁ…』
この船、ハート海賊団の一員になって、早一ヶ月。私、罪無きか弱いレディナマエは船長命令とやらで毎日来る日も「Everyday、スカート」との着用義務を命じられている。言うまでもなくこの“ロ”が付く変態外科医のモロ趣味全開の理不尽すぎるもはや船長命令でもなんでもないただのイジメである。本当意味が分からん。ふざけるのはその目の下の隈だけにしてほしい。よって私服でこの船を生活してるのは私とヘンタ…せんちょーの二人だけ。まあツナギもツナギで嫌だけれど。他の船員は揃いに揃って大の男が全員ツナギというオソロルックを着ていて正直見てるこっちが暑苦しい。あ、でもベポのツナギ姿はとても可愛くてたまらん。
「明日から膝上15cmだ」
『へ?』
「聞こえなかったか、明日から膝上15cm以上。それ以外は認めねェ」
『は………!?』
「15cm以下は斬る」
『き、斬るぅ!?って…ええっ!?』
「いいな」
『ちょ、ちょっと待ってよ!また平然とそんな勝手なことを…!これでも膝上8cmよ!文句あるっての!?』
「15cm」
『イヤよイヤ!断じて拒否!無茶苦茶もいいとこよ!』
「20cm」
………!!
『お、折れないわよ…!そんな膝上15cmなんて…』
「25cm」
………………!!
ふざけてんのか。いや多分本気だろう。そんなの歩くだけでワカメちゃんになってしまう。やっぱどう考えてもふざけてる。
「25cmで、決まりか?」
『せ、せめて…』
「あ?攻めてほしいだ?」
違う。
『じゅ…10セン…』
「犯すぞ」
『15cmでお願いします!はい!』
「利口だ」
『(くぅうっ…無念…)』
何コイツ何コイツ何コイツ!!!本当何様俺様男!!?最低最低最っっっ低!!!
「フン」
『…ひどい』
さぞ満足そうに鼻を鳴らし人の顔を小馬鹿にしたようにニヤニヤ見下してくるトラファルガー・ロー。
――むかつく。悔しい。
でも…
「ナマエ」
『………なによ』
この人の言うこと=絶対的命令は聞かなければもっと恐ろしいことになることを私は知っている。
「命令だ」
スカート義務を命じられた次の日、反抗の意を込めてスキニーを履いた私の姿を見てこの男は「そんなに俺に脱がされたいのか」と船長室に力無き私を拉致りガチでベッドの上に押し倒してきた。(必死に謝って抵抗したらなんとか許してもらえた…)
『グスン(T^T)』
思い出しただけで涙が出てきた
それだけでなく"ROOM"とか言って訳の分からん能力を使って「お前は俺の言う事だけを聞いてりゃいい」と全く無関係の船員の体をバラバラに分解してみせた。(私の為にごめんね、と謝るも何故かその船員は嬉しそうに若干頬を赤らめてヘンタ…せんちょーを見ていた。この船には変態だけじゃなくゲイもいるのか?)とにかく本当恐ろしい男の船に乗ってしまったと身震いしたのも記憶に新しい。
『なんか毎日エスカレートしてどんどん過激になっていってるんだけど…』
「もっと毎日セックスしてどんどん過激にブッ込んでほしいだと?」
『怖いんですけど誰か助けて(どんな耳してんのこの人)』
もはやセクシャルハラスメントの度を越えてドメスティックバイオレンスといっても過言ではない。アーメンラーメンソーメン。
『もうやだ…私この船でこの先やってく自信無い…』
「………」
『我慢の限界、もうだめ…』
「ナマエ…心配無用だ。この部屋は完全防音だからどんだけでも喘ぎ放題だ。好きなだけ我慢せず啼いていい」
『(泣きたい)』
全く全然一切噛み合ってない。話を全部ソッチに置き換えるな。そして今さらっと聞きたくもない恐ろしいこの部屋の設備を聞いてしまったような気がする。ああナムナム。
「どうだ?早速試しに一発…」
『(ブチッ)早速も何もない!!二言目にはいつもそればっか!!毎日同じこと言わせないで!!人をここに拉致っといた用件はそれだけ!?じゃあ私ベポに癒されに行くからこれにて失礼!!以上!!』どーーーん
言い忘れてたがベポと日当ぼっこしていた最中に船長直々に呼び出しをくらった私は「船長室なう」である。(いつでも逃げれるように扉前にスタンバイ)まあ呼び出しというのもスカート丈のことについてだったのだが…全くアホらしい。
「おい待て。まだ用件は終わってない」
『なによ!明日から膝上15cmを穿いたらそれでいいんでしょ!分かりましたよ!私の気持ちなんてお構い無しになんでもあなたの言う通りにすればいいんでしょ!』
「ナマエ」
『………!!』
――ドクン
ベッドの上でムカツクほど長い脚を組んで腰掛けるトラファルガー・ローが私のことをまたその漆黒の瞳でジッと見据えて捕らえてくる。これが船長の威厳というものだろうか。体が金縛りに遭ったみたいにその場から動けなくなる。
「まだ用は済んでいないと、そう言っただろう。俺から逃げんな」
『…っ』
いつも肩に担いで肌身離さず持ってる長刀をベッドの上に置いて残したまま、カツンカツン、とゆっくり足音だけを静かに響かせ近づいてくる。
『ちょっ…』
「俺の言うことだけを聞いてりゃそれでいいと前にも言ったはずだ」
『!』
吸い込まれるような威圧あるその深い瞳から何故か目をそらすことができない。気付くと目の前のトラファルガー・ローと背後の扉に挟まれ完全に身動きがとれなくなっていた。
「ナマエ」
『は、なれ…て…!』
近すぎる二人の距離。
『…っな、れ……て…』
両手を胸の位置で握り締め、揺れて潤んだ瞳を鋭いソレからゆっくり逃げるようにそらす。
「よそ見すんな」
『やっ…!』
「俺を見ろ」
『!、』
バンッと背後の扉に左手を置き、グイッとひんやり冷たい右手が私の顎を持ち上げる。
――逃 げ ら れ な い
『…っ、』
仮にも医者のくせに決して健康とは言えないその顔が真上からゆっくり迫って近づいてくる。
『(ああ…私今日ここで犯されるのねッ…)
今までこの船、海賊船に乗って女として一番恐れていたこと。
『(神は私をお見捨てになるのね…もう神になんて祈らないッ…ゴッドのバロォオオオ)』
覚悟を決めるようにギュッと下唇を噛み締め強く目を瞑った。
「その服、似合ってるぞ」
『――え、』
しかし降ってきたのは予想外の言葉だった。てっきり私はリップを奪われそのままされるがままに強行ベッドinかと…。
「お前はスカートがよく似合う」
『??え、と…』
突然の訳の分からない発言に急に何を言い出すのかと困惑の色を隠せずユラユラ泳ぐ瞳。
「なにも俺は意地悪でお前に命令してるんじゃない」
『?、??』
「こんな滑らかで刺激的な脚を隠すのはもったいない、そう言ってるんだ」
『!』
「俺の言ってる意味、分かるか?ナマエ」
『な、な、なに、言って…』
「俺はお前にこれからもずっとこの艶やかで誘惑的な脚を見せてほしい――もっと」
『!、ひゃっ…』
ゴツゴツ骨張った手が私の太股をスー、とじっとり撫でて這わす。
「魅力的だ…」
『っ――』
耳元で無駄に色気たっぷりの掠れた声で囁くようにわざと息を吹きかけてくる。今までなにかと二言目には決まって下ネタしか言ってこなかった男だから急にそんなこと言われてもどう反応していいのか、困る。それに、恥ずかしい。
「ナマエ――」
『ろ…、せん…ちょ…』
胸の前で握る両手を包み込むように大きな右手がギュッと覆い被さってくる。
「犯したくなるほどにな」
『………え゛』
「犯したくなるほどお前のその肉付きのいい内腿は魅力的だ」
『な、な、なっ…』
「ククッ俺に惚れたか?ほら思う存分濡らしてイかせてやるから俺の胸の中にこい。俺もお前のナカに…」
『〜〜っ!!結局それかァァァ!!』
さっきまでの空気はどこへやら。いつもの変態面でニヤニヤ笑う目の前のトラファルガー・ロー。そんな姿を見てまるで魔術が解けたかのように我に返った私は変態外科医のお腹に一発パンチをお見舞してやった。そして恐怖からか、恥ずかしさからか、一刻も早くこの場から逃げるようにドタバタと慌ただしく船長室を後にした。
「…なに一人で興奮してんだ、この俺が直々に褒めてやってるっていうのにあの女(にしてもなんだあれはパンチのつもりか?ククッ――面白ェ)」
そんなナマエの姿を見て満足そうに意味深に笑うトラファルガー・ローであった。
END
(何あいつ何あいつ何あいつ!!人のことをバカにして…私の無駄な照れを返せバカバカバカ!!)
(ナマエおかえり。ん?どうしたの?顔が真っ赤だよ?)
(な、なんでもない!なんであんな奴に私が顔を赤くさせなきゃなんないのよ!違うんだからこれは!)
(そういえばキャプテンの用事ってなんだったの?)
(!!〜〜っ)
(…ナマエ?キャプテンと何かあったの?)
(な、なんでもないっ…!!)
(???)
2011.09.20 来実