鳥籠の中

□20限目 君と偏屈聖人君主
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――次の日


ユイカイとユカンと登校して今教室のドアの前で私は立ち尽くしていた。


「頬を叩かれた痕跡…。
手首には強く押さえ込まれてできた痣。
これで何もなかったと君は言えるのか?」


「"何もなかった"は雛穴見のみの証言だ。
彼女からの証言はまだ確認されていない。」


「た…確かに最初に抵抗してきた彼女を叩いて拘束したのは事実だけど…。
俺はそれ以上は手を出していない!
これは真実だ!
信じてくれっ水溜君!!」


「一見しただけでこれだけの疑いがある。
衣服で隠されている箇所にどんな痕跡があるか。
それこそ調べなければわからないだろう?」


「み…皆…信じてくれ…。」


あの声は私の苦手なジャスティスの人…。


「アゲハ…ちょっと退いてくれ。」


私はドアから退くと隣にいたユカンが教室に入った。


バッ


「…っ!」


ユカンは教室に入るなり夏越先輩の腕を掴んだ。


「その娘から離れろ、風紀委員。」


「涼暮ユカン。
この件は君には関係ない。
邪魔をすれば君も地下監房行きだ。」


「この娘は私の友だ。
友護ることに何の問題がある?」


夏越先輩はユカンの手を振りほどいた。


「相変わらずの暴力主義者だな、君は…。
弟や紅月アゲハだけでなく五色水溜が他生徒から後ろ指をさされる度に制裁を加えるつもりか!?」


「ヒハハ!
以前、ユカンに取り巻き共潰されたんまだ気にしてんのかァ?」


「…可哀想にね。」


私とユイカイが教室に入り笑うと周りの風紀委員がビクつく。


「あの頃から君らには違和感を抱いていたよ…。
今の姿が君らの本性か…。
フン、監房常連客が。」


「失礼だね。
私はこれでもいい方だよ。」


私とユイカイは冷笑する。


「夏越。
心を傷つけることは暴力ではないとでも?
私はただ護りたいだけだ。
貴様らのような言葉に刄を持つ輩からな。」


「誤解してもらっては困る。
診察し結果を公表することは五色水溜のためだ。
真実を公表しない限り彼女の見方は変わらない。
周りの疑惑や好奇の視線を卒業まで浴びることを考えれば最善の策だと思われるが。」


「水溜…。
辛いかもしれないけど診察を受けるべきだわ。
夏越先輩の言う通りこのままではずっと後ろ指をさされることになるわ。」


水溜ちゃんは絶望したように言う。


「雨ちゃんも水溜が汚くなったって思ってるの!?」


「そんな風に思ってないわ!
…でも水溜は意識がなかったから…。
潔白を証明できないから。」


倒れる水溜ちゃんをユカンが受けとめる。
……あ………れ…?
また…水溜ちゃんね影に靄が…。


「……わかったよ。
診察を受ければいいんでしょ!?
皆・皆・皆、水溜を疑って何か言ってるんだもん!
水溜ただ雛君を励ましたかっただけなのに…。
どうしてこんな酷い目にあわなくちゃいけないの!?」


「違う!
俺は本当に手出ししなかったっ。
頼む!!信じてくれ。」


あれ…雛くんにも…。
どうしちゃったんだろ?
私の目…。


「誠意を裏切ったお前の言葉は今の彼女には届かない。」


ユカンは水溜ちゃんを連れて教室を出ていった。


「さぁ、お前も行くぞ!」


雛くんも連れていかれた。



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