黒執事
□そのお嬢様、水難
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――――少し前
シエルはコールの本性を暴くための作戦を監督生(プリーフェクト)たちに伝えた
レドモンドには、美術室から伸びる糸がつながれた蓄音機のラッパ部分が取り付けられた白鳥宮にいてもらう事にした
「レドモンド先輩、聞いていてくださいね」
「ああ」
残りの監督生を連れ、シエルは美術室へ向かった
残されたレドモンドはジッと椅子に座ったまま、セッティングされたラッパを見た
本当に彼が一人でこのセッティングをやったのだろうか
「(ファントムハイヴ、不思議な生徒だ…)」
ふと考えているとラッパから声が聞こえた
[[まずは手ごわい私から…ってね?]]
「(カナン?)」
何故美術室にいるのか
その答えはすぐにわかった
[流石先生!わかってらっしゃる]
「(コール!?)」
モーリス・コール
シエルが本性を暴こうとしている張本人だ
ショックを受けたレドモンドはただ呆然と聞こえてくる会話を聞いていた―――そして
[お水の中にポーイ!ってしちゃう]
「!!!」
口を何かで塞がれ、苦し紛れに抵抗するカナンの声が次第に聞こえなくなっていった
「(カナン!!)」
レドモンドは立ち上がり、辺りを見回した
すると案の定、裏口から出てきたコールの取り巻きを見つけた
刹那、カナンを湖へ放り込んだではないか
あのままでは死んでしまう
取り巻きが去ったあと直ぐにカナンが落とされた場所に駆け寄り、飛び込んだ
――――水中
手足を縛られ、更に錘(おもり)を縛り付けられたカナンはただただ沈んでいっていた
『(苦しい…苦しい…)』
ぼやける視界
遠ざかって行く水面
薄れていく意識
『(もし私が死んだら…オトナシが魂を回収してくれるのかな)』
考えている中、誰かが手を差し伸べている影が見えた
『(オトナシ…)』
意識が世界から離れた