刀剣乱舞

□『俺の嫁さん〜If√編』
1ページ/1ページ

あれよあれよという間に職場から強制連行。
拉致られた末に専用の装束を無理矢理着付けられ、きつね型の式神一匹と一緒にでかい日本家屋に放り込まれて、

「はい、今日から『審神者』業務頑張って♪」

――――などと、ふざけたことをぬかした政府役人と画面越しに舌戦を繰り広げたのが二日前。
そして今日、じたばた足掻いたところで現状は好転しないことを漸く受け入れ、「仕方ねぇ、取り敢えず一仕事まず手をかけてみるか。」と気持ちを切り替えて初めて行った鍛刀で舞い降りた神様は。
………ぶっちゃけ、この世の『モテない系男子』の敵代表みたいな面構えでした。





―――その上、





「 ―――僕は燭台切光忠。青銅の燭台だって切れるんだ。…刃の強さは折り紙つき。これでも実践向きでね……―――嗚呼、

君は“もう”、知ってるよね?
……『主くん』? 」



艶やかな蒼みを帯びた黒髪に、陶磁器を思わせる白い肌。
……形の良い、男らしい色香を宿した唇が三日月みたいに口角を吊り上げ、流れる黒髪の向こうから猛禽を思わせる金色が螢々と微笑(わら)う。

―――細めた瞳の奥から滲むように染めた『緋(あか)』に、瞬時に手元に引寄せた『何か』を奴の顔面目掛けて放ち、直ぐ傍の障子を開いて飛び出した。





――――ッキィン!





(あ、ですよねー。)

これアカンやつや。
硬質な高い音の後、ゴトン、と重い物が床に落ちる音が続けて背後から届く。

………青銅を叩き切れるほどの剣が、砥石ごときで折れたりしませんよね、はい知ってた。

(……『顔面陥没』咄嗟に狙ったのが不味かったか。)
「 ――――ねーぇ? 」

「!」

遥か背後にいる筈の相手の声が直ぐ近く。
瞬時に下げた頭部の上を横凪ぎに駆ける風切りの音に、堪えきれない舌打ちが洩れる。

「っ、何で“前”より足速くなってんだよデブ野郎ッ!!」
「『こんばす』の差じゃない?……それより今失礼なこと言われた気がするんだけど?」
「ひとの足短いっつった奴がほざくか!」
「…あれ?僕、そんなに懇切丁寧に説明してあげたっけ?割と柔らかめに包んで伝えてあげたような気がするんだけどなぁ………。」

吐息混じりの、腰に響く甘い低音がわざとらしくも「言葉って難しいね。」等としみじみ呟いてみせるものだから余計に腹立たしく。
背後の相手の上半身目掛けて繰り出した蹴りに、愉しげに笑い声をあげた相手を更に引き離すべく速度を上げて前に進む。

「あ、待ってよ。」

誰が待つかこの野郎ッ!





■□■□■□■





―――……、

…………燃えていく『其れ』を、ただ見守ることも出来た。



自分が叩き折り、力で捩じ伏せた相手はとうに言葉など何の意味も持たないほどに狂っていて。
………そうなれば、もう自分達が『彼』に出来ることは『彼』を破壊することでしかなく。

砕けた刃の破片がキラキラと焔の中たゆたい、燃え尽きる寸前の星のように煌めきながら穹(そら)へと昇っていく中に片腕を突っ込み。
今にも砕け散りそうになりながら虚空を掻く掌を、強すぎるぐらいの力で握り込んだ。



………今思い出しても、馬鹿な真似をしたと自分でも思う。



消滅間際まで追い詰められた『相手』がどれだけ危険で恐ろしいか知っていた筈なのに。
その瞬間に祟り殺されていてもおかしくなかった状況下で、どうして『あいつ』の手を取ってしまったのか。



………自分には今でもわからない。





■□■□■□■





本丸内の一室に結界を張り、途中入手したかつての自分の“仕事着”を着込みつつ周囲を警戒していると。
ほどなくしてそいつは姿を表した。

「………もぉー、いぃーかぁーい。」

いい訳ねぇだろ。
何処までふざけた奴なのかと呆れ半分苛立ち半分に思っていたら、


―――…っくすくすくす。



子供がまるで楽しい遊びを見つけてはしゃぐような、そんな滲むような高揚を匂わせた笑い声が小さく震えながら届く。
………猛獣が低く喉を鳴らすようなそれにも似て聴こえるのは、俺の気のせいか?

「………『追いかけっこ』の次は『隠れんぼ』…、……思ってたより子供っぽい遊びが好きなんだねぇ……。」

でも、



「 ――――僕は『子供』じゃないから、もっと大人な『遊び』の方が好みかな? 」



障子越しに視線が交差した瞬間、ベルトに装着した剣帯から『相棒』を引き抜き様、目の前の其れを蹴り飛ばす。
銀の一閃で真っ二つに割れたその向こうから、三日月の形に吊り上がる口許と、ぎらり、と刃のように鋭く光る金の左目。

それがゆらり…、と揺らめく焔のように血の色を思わせる“紅”へと色を変える。



「 …ぁは♪………みぃーつけた。 」



――――嬉しそうにしてんじゃねぇよ、このサド野郎。



続かない(汗)

************

※『みっちゃん』嫁入り前に闇落ち&荒御霊化経験済み且つ、記憶と性格引継ぎルートです。
ケンカップルな感じ?実は見た目物騒なだけでイチャついてるだけ…………は、無理あります?(汗)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ