Devil May Cry
□片恋い(N→D)
1ページ/3ページ
.
『……それでいい。』
『アンタを好きでいられたら、俺はそれでいい………。』
(……どこの純情乙女だ、今時。)
そう、今時。
あんな告白を聞く事があろうとは、自分はついぞ予想し得なかった。
……いや、本気でああいう事をほざく奴が存在したことこそが驚きだった。
偽りは拾えなかった。
あの、蒼銀の眼差しからは。
そこに一欠片でも嘘が垣間見えていたなら、
今までの相手と同じく一笑に付し。
すっぱりと振り払えていた筈だ。
けれど『彼』は本気だった。
その瞳からは何も拾えなかった。
……欲望が。
かと言って子供に有りがちな『勘違い』や『憧れ』……とも、違う。
彼は何もこちらに求める事なく、けれど親愛や友愛とは違う熱を秘めた瞳で。
男を見た。
「――おい、オッサン。」
そして、あんな瞳でひとを見詰めておきながら、
「いつまで食ってんだ。…ってか、皿にはもう何も無いじゃねーか。下げるくらいしろ。」
こんな風に何事も無かったかのように、
『普通』を演じてみせる。
……これが『素』ではないかと、信じ込ませられそうな程完璧に。
実際は、違うのだろうが。
「……坊や、」
「ん?」
「……。」
訝しげにこちらを見下ろす瞳は、酷く澄んでいた。
彼の、不器用だけれど純粋でひたむきな魂を顕すように。
「何だよ。」
「…いや、何でも無い。」
純粋であるが故に、単純明快な面が目立つ彼が表に出さない、
自分への恋情(オモイ)。
普段、あれだけ解りやすいのに、ここまで完璧に隠している相手に違和感が募る。
……やはり、何かの冗談だったのでは?
そう思わせる程に。
「……具合でも悪いのか?」
距離は詰めないまま、気遣わしげな声を降らせた相手の手が浮きかけ。
そして、
――降ろされる。
(……ああ、そうか。)
それを見て、ようやく実感が湧いた。
.