刀剣乱舞
□『俺の嫁さんD〜家族が増えました。』
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ぎょっとして声のした方を見れば同じ金色でもみっちゃんと違う、レモン飴みたいな、鼈甲飴(べっこうあめ)みたいな金茶色の眼で、真っ直ぐに大倶利伽羅が俺を見ていた。
ていうか……え。俺声に出してなかったよね?
え??でてた?
「……俺『も』その『燭台切光忠』も、『本霊』から直接繋がれるはずの『縁(えにし)』を辿らず、違う『道筋』でこの『本丸』へと降りた。…『降りた』というより『移動』してきたといった方が正しいが。既に一度『肉体』の顕現のために用意された『本体』を捨ててもきている。…他の『刀剣男士』と差異が生じたとしてもおかしくはないし、それは『これ』を選んだ俺達の意思から起きたことだ。―――『主』に責は無い。」
………寡黙キャラに見えたのに意外と喋ってくれるんだな、この子。
て、違う違う。
えーとこれつまり………この子、『いいこ』?
て、いやいやいや。
「大倶利伽羅がそう言ってくれるのは嬉しいけど、単純に身体が動かないとかで済まない話だからさ……。」
そう、これが手足が動かないとかだけで済まない場合……目が見えないとか、もっと悪い場合内蔵の方―――『肺』とか『心臓』が動かないとかになれば『刀剣男士』の生命の危機だ。
顕現早々、目の前でみっちゃんと同じ『神様』がもがき苦しむさまなんか見たくない。
(……?待て、今なんか引っかかる内容がなかったか?)
気のせいじゃなきゃ、さっきの大倶利伽羅の話しぶり……「 大倶利伽羅様、 」
って、うぉ?!こんのすけの奴いつの間に俺の膝の上に……???
「大倶利伽羅様の話しぶり、この事態をどうにかする方法をご存じとお見受けするのですが?」
「……俺よりそちらの方が知ってるだろう。」
そう言った大倶利伽羅の視線が差した先には、口許に手を置き、何か思案している様子のみっちゃんがいて。
俺達の視線が向けられていることに気づいて、ちょうど顔を上げたところだった。
「…え?僕??」
「…顕現早々のアンタと俺で、明らかな行動の違いがあるだろう。」
なにかを促すような大倶利伽羅の視線と言葉に、目を合わせたまま黙考していたのだろうみっちゃんの蜂蜜色の瞳が軽く見開かれる。
かと思いきや、ぽわんとその雪みたいに白い肌が色づいた。
「………え、そういう、こと…?」
「……『再会』早々、喰いつきの良いことだ。」
「ちょ、言い方…っていうかその口ぶり、やっぱり『あそこ』にいた『大倶利伽羅』だね?君っ!」
「…いきなりああも見せつけられるとは思わなかったんでね。」
……?
んん??みっちゃんのこの反応なんか……っていうか、さっき引っかかったのってまさか。
「大倶利伽羅、様……??」
「……『くぅ』だ。」
「え、」
「犬猫でも呼ぶように……そちらのと違って反応も返さない『鋼の塊』に、…『何度も』飽きずに呼び掛けていただろう。」
「え…ええ゛??!」
よく見れば少し垂れ気味の眉の下、全体の印象よりもずっと穏やかでやわらかい瞳と、この時『初めて』ちゃんと眼を逢わせた気がした。
「 …それから敬語もやめろ。必要ない。――――アンタ、俺の『父上』になる男なんだろう? 」
視線の先の金茶色がほどけるように蕩(とろ)みを帯びたと思ったら、…少ししてそれが『微笑った』のだと遅ればせながら気づく。
『してやったり。』
…そんな、小さな悪戯(いたずら)を成功させたこどもみたいな、見た目よりも幼くて無防備な笑みに、心臓をやわく掴まれた気がした。
台詞(セリフ)自体は、何の冗談かと思うようなそれだったにもかかわらず。
「 ……大倶利伽羅だ。…別に語ることは無い。
アンタの『息子』として、…『生まれ直した』ばかりなものでね。 」
居住まいを正し、謳(うた)うように淀みなく低い声が紡ぎあげた言葉が。
そのまま切れない『糸』にでもなったかのように、互いの間に『何か』が結ばれたのを感じた。
ぽかんと間抜けに口を半開きにしたままの俺の隣で、みっちゃんが思わずといった様子で小さく笑う。
「 …ずいぶんおおきい子供が出来ちゃったねぇ。 」
続?
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※タイトル通り。
ギャップ萌えな奥さんに続き、ギャップ持ちの息子が突然できた男審神者。