一陽来復

□第参戦
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『……ぅ…』





目の前が眩しいと感じて重たい瞼を開けると、目に映るは茶色の天井

ゆっくりと痛む身体に響かない様に起きて辺りを見渡すと、どうやらどこかの和室の様で身体を見るとボロボロの服の下にあった怪我はご丁寧に手当がしてあった





『…ここは?』





記憶を探るも思い当たる節がない。崖の上で人に会ってクナイ突き付けられて…までは覚えているのだが…

おそらくあの後に気を失ってしまったのだろう





「あ、気が付いた?」





と、言う声と共に天井から橙色の髪の生首が出てくる

夏樹はそれを見ると、顔を青ざめた





『…うわぁ、怖ッ』


「え、何その人外のモノを見た様な顔…。俺様、軽く傷付くんだけど」





よっ、と音も無く畳に降り立つその人物はあの時、崖の上で己にクナイを突き付けた張本人





『あの時の…アンタが俺を?』


「うん。いきなり倒れるから驚いちゃった」





にこやかに笑ってはいるがその目はあの時と同じ、疑いと殺気を含んだものだった






──チャキ……






「さて、あの時と同じ質問ね。君は何者?間者なの?」





未だに微笑みながらもクナイを突き付けて来た迷彩の目を見ながら、夏樹は怯えもせずに答える





『何者って言われると人間?患者じゃないです』


「……ふざけてるの?」


『いえ、至って真面目です』





首に突き付けられるクナイが更に首に近付き、部屋には尋常じゃない殺気が漂う

と、その時遠くから何かが走る音の様な騒音が鳴り響いてきた





『? 何の音?』


「はぁ……たく旦那は…」





ダダダダダダダダダダ…





『旦那?あれ、アンタ男ですよね…』


「いや、そういう旦那じゃないからね。だからそんな冷めた目で俺様を見ないでくれる!?」





ダダダダダダダダダダダダダダ





『あれ?近付いてる』


「…はぁ」






スパーンッ!!!





「佐助!!あの子は目を覚まされたか!?」





襖を壊さんばかりに勢いよく開いて入って来たのは、茶色の髪に赤色の服を纏った青年だった





「ちょっと、旦那!部屋に居てって言ったでしょ、何で来たの!?」


「む、すまぬ…」


「全く、旦那を狙ってきた間者だったらどうするの?」





クナイを夏樹に向けつつも青年を叱るその姿はオカンだと思ってしまったのはここだけの話





「はぁ…。で、どうしたの?」


「お館様がお会いしたいと言っておられるのでな。迎えに来たのだ」


「大将まで!? ちょっと冗談じゃないよ!!」





勘弁してよ!と頭を抱えて叫ぶ迷彩に思わず同情の眼差しを向ける


……苦労人





「まぁ、間者だったら俺様が消せばいいか……君、名前は?」


『(あれ今物騒な言葉が…)…夏樹』





苗字を言うと、ややこしい事になるだろうと思い、敢えて名前だけ言う

その後、名前を聞くと迷彩の人は猿飛佐助、赤色の青年は真田幸村という名らしい



おぉ、この人達があの有名な…





『よろしくお願いします。真田様、猿飛様』


「じゃあ大将の所に行こうか」


『はい』


「今行きますぞ!お館様ぁぁぁああ!!」


「あ、ちょ、旦那ァ!!」





一人先に走り去ってしまった幸村に思わず苦笑する





「ごめんねぇ、いつもあの調子だから。俺様について来てね」


『分かりました』





苦笑する佐助の後ろを夏樹は無言でついて行った





(さて、どうしようか…)








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