賢者の石

□07 想い
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*セブルスSide






とつぜん、ホグワーツに
住み着いた小さな少女。



あれからというもの、あの少女は
毎日飽きもせず我輩の部屋へ訪れては
日が暮れるまで本を読みふけっている。




まだほんの小さな子供だというのに、だ。




普通、あのくらいの年頃ならば、
毎日通うのは中庭あたりだろう。

一人が寂しいというのならば、
祖父であるダンブルドアの元へ
通うこともできるはずだ。



それでも毎日、我輩の元へ訪れるあの少女。







年のわりには落ち着いていて、
ふと、もう大人なのではと思えるような
表情をすることさえある。


かと思えばアイスを食べたいなどと
立ち止まる姿などは、

……やはりまだ子供で。



そして、普段笑顔ばかり浮べているが、
時折見せるあの、
何か大きなものを一人抱えているような
影のさした顔は……














そして今日も我輩は、
朝から仕事の準備をして席に着く。




ただひとついいつもと違うのは、

毎日忘れもせず朝からここを訪れる少女が
今日は来ていない、ということだけだ。






いつも、そこに自分以外の気配があることで
集中ができず、作業が捗らなかったのだ。




丁度いい。


この機会に溜め込んでいた仕事を
片付けてしまおう。




そうやって席に着き、
いつものようにペンをにぎった。







だというのに。


夕方になっても我輩の握るペンは、
まったくと言っていいほど
進んでいなかった。


気配があると集中できないが、
気配が無いなら無いで、
逆に気になってさらに集中できない。




あぁ、この時間だと、
外はもう暗いのだろうな……。


などという考えが浮かび、

そこで、先ほどから
時計ばかり見ている自分に気が付くと、
だんだんイライラしてくる。






あぁ、あいつは…

居たら居たで仕事の邪魔になるというのに、
居なくても我輩の邪魔をするのか!


半ば、八つ当たりのような気もしたが、
イライラの矛先はあの少女に向かっていた。





はぁ……
これでは、仕事が終わらないではないか。




集中しようと何度も試すが、
なかなか上手くいかない。



しばらく、ペンを持ったり置いたりと
意味もない動作をくりかえしていたが、

ふ、とあの少女は我輩の部屋以外
ほとんど行ったことがなかったことを思い出す。




とたん、ひとつの嫌な予感がよぎり、
確かめにいこうと我輩はローブをつかむと、
自室を出て、隣の部屋の扉をノックした。





シン…





やはり、応答がない。
人の気配もしないようだ。





「まさか……」





嫌な予感がより確信に近づく。

我輩は心なしか急く足を抑えつつ歩き始めた。





  
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