賢者の石

□06 秘密の力
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「…………Ms.シンドウ」






「はい、なんでしょう教授」







イライラした声で呼びかけるセブルスに、
ユキはきょとんとした顔で首をかしげた。


その様子に、セブルスはため息をつき、
眉間のしわを深める。






「たしかに、
 勉強に関しての質問ならば
 受け付けると言った。

 しかし、毎日この部屋に
 居座って勉強してもよいなどと
 許可した覚えはないのだがね?」






そう、ここはセブルスの自室だった。




ダイアゴン横丁から帰った次の日から、

ユキは常に
セブルスの自室に入り浸っては、




本を持ち込んで
静かに読みふけっている。


夜寝るときとご飯の時以外は、
ずっとこんな調子だ。




セブルスの言葉にユキは、
意味が解らない、といったふうに
さらに首をかしげた。





「だって、こっちのほうが
 解らないところをすぐ教授に聞けますし。

 解らないところだらけだから、
 毎日何回も何回も扉ノックするよりは
 この方が絶対に良いと思うんですけど」




たしかに、ユキの言うとおりだ。



それに毎日、ユキは静かに
隅のほうの椅子に腰掛け、本を読むだけ。


ユキくらいの年齢なら、
仕事中もお構いなしに
話しかけてくるものと
思っていたセブルスだったが、

しかし、ユキはただ、
本を読むだけで無駄な話はしてこない。



そして、セブルスの仕事が
ひと段落したときを見計らって、

ためこんでいた大量の質問を
なげかけてくるのだった。

だから、邪魔なことをしたことは、
一度もなかった。





しかし、いつもならば
誰一人よりつかなかった部屋に、
常に人の気配があることに、

セブルスはなんともいえない
落ち着かなさを感じるのだ。







「はぁ…」




だがそんなことは
理由として言えるはずもなく、
セブルスは、ため息をついた。




「……静かにして
 いられるというのであれば、許可しよう」




そう一言だけ言うと、
また停めていた仕事の手を
動かし始めた。






 
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