短編集

□補講時間
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魔法薬学は、知れば知るほど奥が深く、
勉強することはたくさんある。

だから、魔法薬の授業は大好きだった。


それに私は、この教科を担当していて、
今前方で熱心に講義をつづける
黒尽くめの彼のことも、嫌いではない。


皆、彼の何をそこまで嫌うのか。
たしかに贔屓はするけれど、
熱心に勉強すれば、
たとえグリフィンドールの生徒でも、
ちゃんと見てくれる。



彼のひとことひとことだって、
すこし言い方は悪いけれど、

ちゃんと聞いていれば、
危険な魔法薬で
ミスをしそうな生徒に対する、
彼なりの注意なのだと分かる。



だから私は彼のことは嫌いではない。











「今日もありがとうございました、教授」



私は、いつものようにお礼を言ってから、
席を立った。




「フン、良くもここまで
 質問が尽きないものだな」




分厚い参考書を閉じながら、
彼も立ち上がり、言う。




「魔法薬は、奥が深いですから。
 だから、いくら勉強しても
 疑問が次々わいてくるんです。
 
 …あぁ、でも、そうですね、
 テストの内容とは
 少し反れてしまったかもしれませんね」



「……いや……」



質問の内容を振り返り、
少し反省したのだが、
彼は少し困ったように
視線をはずしてしまった。




「……あぁ、そうだ、
 紅茶はどうするかね?」



「あ、頂きます。ありがとうございます」




急に思い出したように言われた彼の提案に、
私は嬉しくて笑顔でうなずく。

すると教授は、スッと杖を取り出し、
紅茶セットを魔法で呼び出すと、
慣れた手つきでいれてくれるのだ。




ふわりと、薄暗い地下牢教室に
甘い紅茶のいい香りが広がった。








こんなふうに、

教授は最近講義の後、
よく、紅茶を入れてくれるようになった。



私は教授が入れてくれるこの紅茶が好きだ。

香りも味も、ふんわり甘くて
気持ちが落ち着くから。





楽しみにしていた放課後が、
もっと楽しみな時間になっていく。

次の補講が、
もう今から待ち遠しくて、
たまらなかった。






  
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