短編集
□2:目線、はずれがち
2ページ/2ページ
*スネイプ教授サイド
最近の悩み。
それは、授業に集中できないことだ。
演説中、そして材料を用意しているとき。
常に感じるその視線が気になって仕方が無い。
その視線の主は、グリフィンドール3年生、
*****・*****だ。
魔法薬学の成績が非常に良く、
毎日のように放課後質問に来るため、
名前、顔、ともにしっかり覚えていた。
だが、授業中に視線を向けるな、などと
注意したことはない。
普通なら別段注意することではないからだ。
熱心に話を聞いている証である。
それに、魔法薬の調合中は
手元に視線を移し、
非常に手際もよい。
そしていつも、一早く薬を完成させるのだ。
そしてその質は、どの生徒よりも完璧だった。
教科書だけでできる質の良さではない。
我輩の話をきっちり、
一言も聞き漏らさないで
聞いていないと出来ないことである。
グリフィンドールでなければ、
むしろ、ほめてやりたいくらいである。
しかし、なぜこんなにも気になるのか。
無意識に、変に視線を意識してしまい、
動きがぎこちなくなる自分にイライラする。
そんな苦悩を
露ほどもしらない*****は、
今日もまた、黙々と薬を作っていた。
あぁ、じつに手際がいい。
生徒にしておくにはもったいないほど、
機転も利き、無駄の無い動き。
・・・助手にしたいくらいだな。
などと、
我ながら馬鹿げたことを考えたりした。
ふと、視線を*****の手元から
頭のほうにうつす。
自分と同じ漆黒の髪が、
さらさらと顔にかかっている。
それを払おうともせず、
真剣な顔で黙々と作業を続けている*****を、
学生時代のころの自分と重ねた。
色の白い顔には、真剣に薬を見つめる、
同じく漆黒の瞳がよく映えている。
・・・綺麗だ・・・
その後、すぐに
自分が今無意識に考えたことを思い起こし、
はっとした。
何を考えていたのだ。生徒だぞ!?
そのとき、
ふ・・・
と*****がとつぜん顔を上げて、
ばっちり目が合ってしまった。
「!!」
心臓が、はねた気がした。
さっきまで考えていたことが考えていたことだったため
いたたまれない気持ちになり、
ばっ、と視線をそらすと、
そのまま違う生徒のほうへと向かう。
今のはあからさますぎただろうか。
変に思われたかもしれない。
まったく、我輩は何をしているのだ。
気になってもう一度振り返ると、
*****は出来上がった薬を
教壇へ持っていくところだった。
・・・そうだ、
あいつばかり見ていても
仕方がないではないか。
今は授業中だ。
*****などに
見とれている場合ではないだろう。
・・・・見とれている・・・?
あぁ・・・考えるのはやめることにしよう。
本当に、我輩はどうかしている。
はぁ・・・それもこれも
あいつがこちらに向ける視線のせいだ。
そして、そんな2人を、
「あぁ・・・はやくくっつかないのかな・・・」
もどかしい気持ちで
生徒たちが見守っていることに、
当の本人達はまったく気づかないのであった。
.