賢者の石

□16 クィディッチ
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朝が来た。




寒い朝だ。




空は晴れ渡り、
絶好のクィディッチ日和だと言えた。







朝の大広間は、
いつもより随分と賑わっていた。

しかし、皆が浮き足立つ中、
ハリーはずっと緊張した面持ちで、
先程から何も口にしていない。



「朝食、しっかり食べないと」


「何も食べたくないよ」


「トーストをちょっとだけでも」


「お腹すいてないんだよ」



ずっとこんな調子である。



「ほら、ユキもなんとか言ってやり…
 
 ユキ…?」



「………え? あ、あぁ、
 そうだよね、ハリー、何か食べなきゃ!
 ほらほら、あーん」



そして朝から様子が可笑しいのがもう一人。




「ユキったら、どうしたのさ?
 さっきからずっとぼーっとしてるよね?」



「ほんとよね。
 ここ最近ずっと様子が可笑しいとは
 思ってたんだけれど、

 それにしても今日は一段とひどいわ」




ハリーと同様に、
食がすすまない様子のユキは、

今朝、起きてからというもの、
ずっと何か考えている様子で俯いたまま、
心ここにあらずといった状態である。




「あーもう!
 あなたがそんな状態だったら、
 ハリーが余計緊張するわ!」


「……え? ああっ、うん!
 ごめん、ぼーっとしすぎだね。
 あはは、何でだろね」




ユキは困ったように笑うと、
頬をぺちぺちと叩く。




「ん、よし! 決心ついた!」



「は? 何がさ」



「あ、あぁ、いや、こっちの話!」



「…………? まぁ、いいけどさ」






















――いける。大丈夫。




あれだけ練習をつんだんだ。

教授だって、ついてる。






嫌な予感なんて、


ただの『予感』だ。









…なにも、迷う必要なんてない…。








         
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