賢者の石

□12 飛行訓練
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寮の談話室に、
飛行訓練開始をつげる掲示が張り出された。

それからというもの、
生徒達はみな、色々な意味で
そわそわと落ち着かない様子だった。




そう、彼女もそのひとりである。





「ねぇ、ハーマイオニー?」


「ダメよ、話しかけないで。
 今、飛行術の方法を暗記してる所なの」





ハーマイオニーは、
あの掲示が張り出されてからというもの、
ずっとこんな調子だった。

普段以上に、暇を見つけては本を読み漁り、
ずっとピリピリしている。




「もう、夕食がなくなっちゃうよ?」


「先に行ってて?
 私、このページを読み終わったら行くわ。
 
 明日が本番なんだもの。
 あぁ…今夜までに覚えきれるかしら……」


「はぁ……
 わかったけど、かならず来るんだよ?

 あのね、ハーマイオニー。
 もちろん理論を覚えるのも大事だけど、
 飛行は楽しむ気持ちと、あとは体力!
 夕食食べないと、体力もでないからね?」




だが、彼女はもう、
本に集中してしまっていて、

ユキの助言なんて
耳に入っていない様子だ。



ユキは、ため息をつくと、
ひとり、夕食へ向かったのだった。












夕食へ向かう途中、
黒い後姿を見つけたユキは、
駆け寄った。




「スネイプ教授!」


「っ、ああ、Ms.シンドウ。
 何か、用かね?」




予想以上に、驚いた様子のセブルスに、
ユキは首をかしげる。




「何か、考え事ですか?」


「……いや……」




彼にしては珍しく、
視線を彷徨わせている。

ユキはかしげる首を、
もっと横に傾けた。



「んー…?
 まぁ、いいですけど、

 あ、そうだ、教授も夕食ですよね。
 良かったら、一緒に行きませんか?」



「…………。

 はぁ…
 まぁ、いいだろう」



なんなのだろう、今の間は。
なんなのだろう、あのため息は。



言いたいことは色々あったが、

それよりも、
教授が一緒に来てくれる喜びの方が、
今は勝っているようで。


ユキは、
満面の笑みで、


「ありがとうございます!」


というと、心なしか早足の
セブルスの後を追いかけ、
広間へと向かうのだった。





   
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