賢者の石

□09 初授業と、白い箱
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入学式の次の日。
いよいよ今日から授業がスタートする。



前日から今日という日を
楽しみにしすぎたせいか、

ユキが目を覚ましたのは、
いつもなら考えられないほどの早朝だった。


まだ皆は寝静まっているようで、

実は結構壁の薄い寮内は、
コトリという音すら聞こえずに、
静まり返っている。






ユキはゆっくり起き上がると、
カーテンを少し捲り、外を覗いた。


辺りはもうぼんやりと明るかったが、
やはりまだ少し薄暗く、

空は太陽が昇る少し手前の、
紫色とピンク色が混ざったような
淡く綺麗な色をしている。





しばらくぼんやりと、
そうやって外を眺めていたユキだったが、

こうも早朝では特にやることもなく、
そのうちに、だんだん暇になってきた。







――あぁ、そういえば、
最近は本ばかり読んでたけど、


ここに来る前はよく,
早朝ランニングとかして、
結構体とか動かしてたっけ…








立ち上がって軽く伸びをする。









きっと、向こうにいたときより
体はなまっているはずだ。




実は昨日も、
学校までの坂道を歩くだけで
あがってしまった息に、
びっくりしたのだ。







ユキは、ふと思い立つと、
そっと静かに身支度をしはじめる。







時間もあるし、

ランニングは少し無理かもしれないが、
体を動かすくらいは
しておくべきかもしれない。

今後、身体能力はきっと必要だ。







動きやすそうな服を
引き出しの奥から引きずり出し、
着替えをすますと、

ユキはそっと、部屋を抜け出した。






  
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