賢者の石

□07 想い
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*ユキSide








ここに来て、半月が過ぎた。

セブルスとは相変わらず、
まともに会話すらできない。



……というより、
仕事の邪魔はしたくないから、

私があまり、
話しかけないだけなのだけれど。








前だったら気軽に

セブルス、セブルス、
って気軽に呼べていた名前だって、


この世界にきてからは自然と
"スネイプ教授" になってしまっている。



…心の中ではいつもどおり
『セブルス』なのに、

口に出しては絶対に呼べない。






もうすぐ私は彼の生徒になるんだから、

なおさら、駄目だ…







あぁ、そうか。


こうやって考えてみたら、
本当は実際、壁を作ってるのは私の方…
だったりするのかもしれない。





無意識のうちに、遠い存在だ、…って、
決め付けているのかも。







……だって、
もとは住む世界さえ違った人なんだよ…?





そばにこうやって居られて、
話せて、触ることもできるなんて。


そう考えると、
今の日常は、幸せすぎることだと思う。


家族みたいによくしてくれる人も、
たくさん出来た。

そして、一番会いたくて、でも本当なら、
会えるはずがなかった人物が、すぐ隣に居る。



これ以上になにか望むなんて、
欲張りにもほどがあるのかもしれないね。







だから、望んではいけない。


望むことは、許されない。










…この大きな壁が崩れるのは、

 きっと、まだまだ先のことになりそうだ…















今日も私は、
いつものように身支度をととのえ、
本棚をあさっていた。




でも上の段から順に、
しかもあのスピードで、

毎日片っ端から
読みあさっていたせいだろう。


ここにある本は、昨日のでもう
全部読み終えていることに気づく。







それにしても、この半月の期間だけなのに、

この本達のおかげで、
薬草や呪文の種類などに関しては
かなり知識がついたように思う。

応用的なことになってくると、
記憶だけではまったく上手くいかないけど、

基礎くらいなら完璧かもね!

なんて思える。




まぁでも、あくまで"知識だけ"だ。





技術力は限りなく0に近かった。
なにせ、一度も魔法を
使ったことがないのだから。




「あー! そうだ!」




私はいい事をおもいついて、
嬉々として声を上げた。


そうだ。別にまだ、私は生徒じゃないし!
魔法を使うなとも言われていないもんね!


そういえば、セブルスの部屋で
本ばっかり読んでたから、
私、他の場所へ行ったこと
なかったっけ。







「……ちょっとくらいいいよね」





ふふふ、そうと決まれば!


私は鼻歌交じりに、
かばんから杖を取り出すと、

扉を勢い良くあけ、小走りに
意気揚々と中庭へ向かったのだった。






道もろくに覚えていない校内には、
道を尋ねようにも休暇中
めったに人が通らない。


…そんなことにも、気づかないまま…





   
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