短編集

□不器用な贈り物
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季節の夢小説集その2


教授夢


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寒い寒い冬の日。


この日はとくに冷え込んで、
はく息も真っ白だ。




しかし、私はこの日、

おそらく本校で
一番寒いんじゃないかと思われる
地下牢の教室でがたがた震えながら、

薬品棚の整理をしていた。




友達と中庭で雪合戦をしていたら、
雪球が運悪く一番最悪な人物に
あたってしまったのだ。








「うううう、さーむーいー」





あぁ、もう。
このままでは本気で凍え死にしそうだ。

もう手も足もかじかんで、
感覚をかんじなくなっている。


私は、手に息を吹きかけて
こすりあわせた。






「なんでこんな日にかぎって…」






ぼそぼそとつぶやきながら、

ホルマリン漬けのビンを
チェック表に記入したあと、棚にはこぶ。




かじかんでいるからといって、
うっかり落としたら、


後ろでさっきから黙々と
書類に目を落としている
あのセブルス・スネイプに、

罰則をさらにふやされることは
おそらくまちがいないのだ。



慎重に慎重に、
ビンを棚にならべなおしながら
私は白いため息をついた。




「あーあ…
 こんなに冷え込んでなければな…」




そしたら、教授と二人きりで罰則とか
別に苦ではない。
むしろうれしいのに。



そしてちらりと教授を見る。



そう、私はスネイプ教授が大好きなのだ。
みんなからなんと言われようが


大好き・・・

いや、むしろ愛している。



ここでこうして2人きりでいる事実は、
私にとっては罰則というより
むしろご褒美である

…はずなのだ。




しかし、
これはあまりにも寒すぎる。

拷問である。






「おい…」





いや、でも、

この2人の空間の幸せが
ホカホカと私の心を暖めてくれるから……


いやでも体はどうあがいても
寒いものは寒い!!






「おい!!」


「へぁ!?」





突然の教授の大声に、
私はびっくりして変な声をあげた。




「どどど、どうかしましたか?」


「どうかしましたか?ではない!
 急に静かになったと思い、
 見に来てみれば……」




はぁぁ…



教授は重くため息をつくと、
眉間のしわを何倍にもふやした。


 
「罰則を言いつけられておいて
 仕事もせずにほうけているとは……
 いいご身分ですな」


「いや、その、あのっ、

 こ、このホルマリン漬け、
 どこに置けばいいかなーって
 考えていて……」



教授のことを考えていました!

とは口が裂けてもいえず、
あわててそう返す。



「貴様のその目の前の棚、
 上から3段目の右だ。

 わかったらさっさと
 作業を続けることだな」



教授は訝しむように
じっとこちらを見ていたが、

じろりと睨んでそう言うと、
やがて自分の机へ戻っていった。




「はぁ…」



教授はいつもあんな調子だ。

きっと私のことも、
グリフィンドールとしてしか
見てないんだろう。


あーあ、一生両思いになれることは
ありえい気がするな……。



私は、ちょっと自暴自棄になりながら
作業を続けた。





ビンを置き終わり、
薬品庫のビンを机に持ち運ぶ。




ふと、先ほどまで
リスト以外に何もなかった机に、

なにか置かれていることに気がついた。



なんだろ…



薬品を机に置くと、
それを手に取ってみた。




「あ…… これ……」



それは、黒い袋に入ったカイロだった。

市販のものではないようだ。
教授の薬品のにおいがする。

きっと教授が調合した
魔法薬かなにかでできているんだろう。



さっき注意をしにきたときに、
教授が忘れていったものだろうか。


そう考えた私は、教授に声をかけた。





「教授!」




しかし教授は、書類から目をそらさない。




「スネイプ教授?」




もういちど声をかけるが、
やはり一向に顔をあげる気配はない。


が、書類に書き込む手は止まっていたので
聴いてくれてるのだと思った私は
気にせず問いかけた。





「あの、これ……

 教授のですか?」





しかし、教授は無言のままだ。





「あの…」




う……

どうしよう……





わたしが困り果てていると、

それを見かねたのか、




はぁぁ…




と教授の深いため息が聞こえた。






「寒いのだろう?」





顔は上げずにぼそぼそと、

しかしたしかに一言、そう聞こえた。



「え……?」



それって…

このカイロ、
私が寒がってるから教授が……私に…?



信じられなくて聴き返したが、

それ以上教授は
私に口を聴いてはくれなかった。





「これ、じゃあ、
 教授が私にくれたと
 思っていいんですか?」



「……………」




「もらっちゃいますよ?」




「……………」




「いいんですね!?」




「……………」







めったに見せない教授のやさしさを

垣間見れた気がして、

私はうれしくてたまらなくなって





「教授……っありがとうございます!!」





笑顔でさけんだ。






そのとき、髪の間から見える教授の耳が、

かすかに赤くなった

…ような気がした。







これって、
これって期待しちゃっていいんだろうか。






その後、私はカイロを
上機嫌でにぎりしめながら、

罰則を終わらせたのだった。






END


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実は、初代夢小説。
処女作です。
お恥ずかしいかぎりです。

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