短編集

□日本伝統文化講座
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季節の夢小説集 その2


■教授×生徒 恋人設定

■ギャグ夢。恋愛的要素皆無。



********





「ふんふんふん」



お正月の歌を鼻歌で歌いながら、
私はセブルスの部屋で紅茶をのんでいる。



「さっきから何の歌かね、それは」



セブルスが訝しげに聞いてきたので、
わたしは目をぱちくりさせて彼をみた。

でも、しばらくしてからハッと思い当たる。



「あぁ、すっかり忘れてた!
 ここはイギリスだもんね。英国だ英国」



ひとりで納得する私が気に入らないのか、
セブルスが眉間のしわを濃くしたので、
私はあわてて説明を加えた。



「えっと、この曲はね、
 日本ではとっても有名な曲なんだよ。

 お正月を、まだかなーまだかなー
 って、楽しみに待つ気持ちを
 歌詞にこめた歌、かな」



「……日本独特の曲調だな。
 
 だが、年がかわるとはいえ、
 そこまで楽しみなものなのか?」




くだらないとか言うのかと思ったら、
以外にも興味を持たれて、びっくりする。

ていうか……




「え、お正月、めでたいじゃん。
 年賀状とかさ、お年玉とか。
 ……楽しみじゃない?

 あぁ、まぁお年玉とかは
 もうセブルスには縁のない話か」



「ねんが状?落とし玉?
 日本の文化か何かか」




その言葉に、またもびっくりする私。




「えっ、年賀状だよ、知らない?
 年初めにおくる、
 年が明けましたね、おめでとう。
 今年もよろしくおねがいします。
 みたいな感じの内容の挨拶状のこと。

 お年玉はね、新年のお祝いに
 親や上のお兄ちゃんとかから
 お小遣いをもらうこと……かな?
 まぁ、簡単に言うと、
 大人から子供がお金がもらえるの!


 …イギリスでは、そういうの無いの?」




驚きで目を見開いたまま、
そうたずねると、




「そういった挨拶状ならば、
 クリスマスカードなどといったものが
 それに似たものかもしれん。
 だが、新年にそういった類のことをする
 週間はないといっていいだろうな」



セブルスは、考えつつそういった。




「えぇ、もったいない!
 せめて、羽子板とか、福笑いとかで
 盛り上がるくらいはしないと」



私がそういうと、
また新しい言葉がでたな……
みたいなセブルスの顔。

私はにやりと笑って、
かばんからお正月グッズを
次々ととりだした。



羽子板、福笑い、
達磨落としに双六やかるた等……



セブルスは、もの珍しげに
それらを見つめている。





「最近はいつも持ち歩いてるんだよ。
 学校中の先生生徒に布教するつもりで
 持ってきたんだけどね……

 なんと!セブルスが布教計画の
 最初のターゲットなの! おめでとう!」





嬉々として言う私に呆れつつも、
セブルスは教えてもらう気はあるようだ。





「どれも見たこともない。
 これなんて、奇妙な絵だな」




達磨落としの
達磨の頭を転がしながら言うセブルス。




「あぁ、これはね、こうやって遊ぶの」




つみあげて、我ながら上手いこと
ハンマーでひとつひとつ落として見せた。




「上にある達磨の首を落としたらまけ。
 セブルスもやってみて!
 なかなかコツがいるんだよね、これ」




ばかばかしい、簡単だ。

とでもいったような顔で、
セブルスはハンマーを手に取った。

似合わないそれに、
思わず笑いそうになるのを必死で耐える。


しかし、何回かやるものの、
なかなか上手くいかなくて、
少々ムキになっているセブルスを見て、
とうとう私は噴出した。





「なにがおかしい」


とたんに不機嫌になるセブルス。




「ご、ごめ……ぶくくっ……」


しかし笑いがとまらないのだから仕方ない。

ますます眉間のしわを濃くするセブルス。
そうとうご機嫌斜めのようだ。




「まぁ、まぁ。」




宥めながら、

これはこうやって……

とコツを細かく教えてあげる。






そんなふうにして、私の日本伝統文化講座は、

お正月にわたるまで繰り広げられたのだった。







END

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