流転の謳歌。

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まどかはもう自分たちを見ていない。
彼女が向かい合っているのは、インキュベーターか、あるいは魔女か、あるいは自分の運命か。

「数多の世界の運命を束ね因果の特異点となった君ならば、どんな途方もない望みであろうと叶えられるだろう」

「そんな…やめて…まどか…っ!」

あきらには分からない。ただ、まどかの言葉と行く末を見ることしかできない。

「ほむらちゃん、わたし、やっと分かったの。叶えたい願い事見つけたの。
だから…その為にこの命、使うね」

「やめてよ!!

それじゃあ私は…今まで何のために」

あまりにもまどかの言葉は残酷すぎた。優しいほどに。
ほむらの幾度にも及ぶ戦いを否定し、そしてあきらと出会った運命までもを否定してしまう、そんな残酷な言葉。

まどかはそんなほむらを宥めるようにソウルジェムに触れる。まどかはもう謝罪の言葉をいれたりしない。

「これまでずっと、ほむらちゃんに守られてきたから今の私が在るんだと思う。

そんな私がやっと見つけた答えなの。

だから…信じて……」

まどかは立ち上がり、キュゥべえを強く見つめた。ほむらはずっと俯いている。

「さあ鹿目まどか。その魂を対価にして君は何を願う……?」


まどかは落ち着くためなのか大きく息を吸った。
一瞬時が止まったのかと思うほど、静かな瞬間が訪れる。



「全ての魔女を、
   生まれる前に消し去りたい」


その言葉に目を見開いたのは2人の魔法少女だけではない、他ならぬキュゥべえまでもが、予想だにしない言葉に固まっていた。

「全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女をこの手で……」

「その祈りは――」

しかし今更止めることなどできない。契約は絶対だ。魂と運命、膨大なエネルギーを対価にかけただけ、その跳ね返ってくるエネルギーも尋常ではない。

まばゆい光がまどかを包む。

「そんな祈りが叶うとしたら…それは時間干渉なんてレベルじゃない…因果律そのものに対する叛逆だ!!

君は…本当に神になるつもりなのか!?」

「神様でもなんでもいい、これまで希望を信じてきたみんなを泣かせたくない。
最後まで笑顔でいてほしい」

「だから――

それを邪魔するルールなんて…壊してやる!変えてやる!それがわたしの願い!
さあ…叶えてよ!インキュベーター!!!」

最後にあきらが見たのは、ピンク色の光に包まれ神々しい笑みを浮かべる、女神だった気がする。


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