流転の謳歌。

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「あれ…?」

ここはどこだろう

確か最後、すごくきれいなものを見た気がする。

「ん……」

でも身体は動かない。湖の中を石が沈んでいくように、奥へ奥へぐいぐい引っ張られているような感じがする。

多分最も奥にたどり着いたそのとき、自分は魔女になるんだろうなと思った。

静かに眼を瞑る。

これが運命ならば仕方ない。望んだのは私、願ったのは私、思ったのは私、行き着いたのも私。

ただ誰かに壊してと願うばかりだけど、仕方ないのだろうか。

「っ…!!」

ふと眼を閉じているはずなのに眩しさを覚える。驚いて眼を開くと、そこには魔法少女となったまどかがいた。

「…まどか…?」

微笑みながらあきらの手に触れる。

いつの間にか自分を下へと引っ張っていた力は感じなくなっていた。まどかに引き上げられるようにその暗い世界を泳いでいく。ふと気付けば、あたり一面真っ白な世界にいた。

「これは…」

「あきらさん、私の願い聞いててくれましたか?」

「じゃあ、これって…」

「私の願いはあきらさんの願いを否定する事になっちゃいますけど…」

また優しく笑い、まどかはあきらの手を握った。

「私を、浄化してる?」

「はい。“浄化”です」

あきらの能力とは根本的に違う神がかり的な能力。少しずつ、あきらの身体から強張りが消えていく。暖かい何かに包まれていく。すっきりとした思いがする。いつの間にか纏っていたはずの黒が色を無くしていく。

「私、あきらさんにお礼を言いたかったんです」

「は?」

「マミさんがいなくなっても、私やさやかちゃんのために一生懸命戦ってくれて、守ってくれて、本当に嬉しかった」

「私は…そんな……」

まどかはぎゅ、とあきらを抱きしめる。

「あきらさん、今までありがとう」

ふと寒気がした。まるでこれでは永遠の別れのようではないか。いや、心のどこかでは分かっていた。まどかの願いが、何を生み、何を消すのか。

「そっか…まどかはすごいな」

「あきらさん、私、いい魔法少女になれました?」

冗談めかして聞かれると、ふと涙腺が緩んでしまう。

「ああ、何て言うか、女神だな、女神」

「もう、あきらさんっ!」

「はは、ごめん」

笑っているのに、涙が伝う。白い服に落ちた水滴は黒い染みを作っていく。

「まどか、こっちこそ、本当に…ありがとう」

まどかに救われた。

「ありがとう、あきらさん」

まどかの姿が霞んでゆく。
彼女もまた、彼女の選んだ道を行く。
まどかが消えていくのを感じた。



せめて少しでも長く彼女を留められるようにとあきらはその名前をひたすらに呼び続けた。








その呟きが止まる頃、あきらがいたのはとある駅のプラットホームだった。

「……?」

何故自分の白い服が濡れているのか、あきらには分からない。


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