流転の謳歌。

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雨が強くなる。強風にあおられ散らされた木の葉もろとも、あきらの部屋の窓を叩き付けた。

町全体に避難指示が出されている。

ワルプルギスの足音がきこえる。

目を閉じれば耳鳴り、どこかで、誰かが、魔法少女が戦っている。

運命に抗っている。

たとえば、暁美ほむらなんていう魔法少女は、典型。

運命に抗うために、魔法少女になったのだから。

運命、運命といえば、魔法少女の運命って何なんだろうか。

それは魔女になる事に決まっている。

決まっているはず、なのに……

「……納得してないんだよなあ」

魔法少女の運命が魔女になる事なら、それを否定するに近いものを願った自分は、“運命”なのか?

魔法少女の運命が魔女になる事なら、自分の、夏目あきらの運命は、いったいなに?

巴マミの運命は死なの?

美樹さやかの運命は魔女になる事だったの?

佐倉杏子の運命は心中する事だったの?

鹿目まどかの運命はなに?

暁美ほむらの運命はなに?

2人の運命は、なに?

「……」

今まで否定ばかりしてきた。

誰かの願いを否定した。思いを拒んだ。その本心も知らず、傷つけてきた。殺してきた。死なせてきた。

ほむらは今、戦っている。
ワルプルギスなんかじゃない、ずっとずっと、運命と闘ってきたのだ。


  『私を恨んで』


そうやって自分までもを運命から遠ざけて、下手糞なりに守ろうとして。

「何してんだろうねえ、私は」

こんな馬鹿なやつじゃあ、なかったはずなのに

ソウルジェムを見る。もう自分の顔は映らない。笑う。

「頼むよ、私の魂。
 悪あがきぐらい、させてくれよ」


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