流転の謳歌。
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杏子はまどかを屋上に呼び出していた。けしていい思い出ばかりとはいえない少女との会話に思い詰めた顔をしているが、それは杏子も同じだった。
「美樹さやか、助けたいと思わない?」
「! 助けられるの…?」
「わかんねーよ。
…でもさ、あたしは助けられないって分かるまで諦めたくないんだ。バカかって思われるかもしれないけどね」
少し顔を反らして俯く。
「あいつは魔女になっちまったけど、友達が呼び掛ければ人間だった頃の記憶を思い出すかもしれない。そして、それをやるならあんたしかいない
あの魔女を真っ二つにしたらさ、中からソウルジェムが出てきてさやか復活!!…とかね、そういうもんじゃん?最後に愛と勇気が勝つストーリーってのはさ」
まどかが杏子を見ると、彼女は照れたように頬を掻いていた。
「思えばあたしもそーゆうのに憧れて魔法少女になったんだよね。
さやかはそれを思い出させてくれたんだよ」
そこまで言って、杏子はゆっくり目を閉じ、祈るようにしているまどかに向き直った。
「無理強いはしないよ?アンタを守りきる保証もできないし…」
「……ううん、手伝わせてほしい」
「私にも手伝わせてほしい」
二人の視線は物陰から何食わぬ顔で出てきた魔法少女に集まる。あきらの顔を見た瞬間、まどかはほっとしたような顔をした。
「キュゥべえに全部聞いたし、悪いけどあんたらの会話も聞いてた」
「だけど手伝うって…足止めでもする気か?」
「理屈――根拠ならある。
私の能力はソウルジェムの穢れを浄化すること。で、ソウルジェムはグリーフシードだ。なら…」
「グリーフシードの穢れも吸いとれる…って事ですか?」
あきらはしばらく自分の手のひらを見つめていた。
「もちろんやった事なんかない。だから、できないかも分からない」
ふ、と笑う。
「確かめようと思うんだ。限界まで…な」
あきらの笑みを見て不安になるのは初めてだ。まどかは眉尻を下げる。
「だから、3人で」
杏子はしばらくその様子を見つめていたが、やがて静かにスナック菓子の封を切った。