流転の謳歌。

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杏子とあきら、二人のソウルジェムが輝きを増す。頷き合うと魔力を解放して魔法少女へと変身を遂げる。

杏子が槍で結界の隙間をつつき切り裂くと、そこには長い廊下が続いていた。
杏子、あきら、まどかの順に足を踏み入れる。

「ほむらちゃんも手伝ってくれないかな…」
「アイツはダメだ。そーゆうタマじゃない」
「友達じゃないの?」
「違うね。利害の一致でつるんでるだけさ」

あきらが横を見ると、そこにはあきらの知らない名前のヴァイオリニストのコンサート詳細が書かれていた。端の方が剥がれているポスターにはびっしり“LOOK AT ME”の文字が書かれていて鳥肌が立った。
さやかは恋をしていたのだろうか。
だが、魔法少女の恋は、世界を呪う。

「あと何日かしたら“ワルプルギスの夜”がくる」
「ワルプルギス?」
「魔法少女にとって最大の敵…超弩級の大物魔女だ。
みんな一人じゃ敵わない。それであたしら3人で共同戦線張ってるってわけさ」

その話をどこか気まずそうに聞いていたまどかはぽつりと言う。

「…いつも誰かに戦わせてばっかりでなにもしないわたしって…やっぱり卑怯なのかな?」
「…なんでまどかが魔法少女になるんだよ」
「あきらさん…」

目を細めて明らかにまどかは自分を責めていた。杏子が歩みを止め、これまたドスの効いた声を発する。

「…舐めんなよ」

その覇気とも怒気ともとれない雰囲気に気圧されてまどかは息を呑む。

「この仕事はお遊びじゃねーんだ。命を危険に晒すってのはな、そうするしか他に仕方ない奴だけがやることだ。

幸せ家族に囲まれて、なんの不自由もなく暮らしてる奴がさ、ただの気まぐれで魔法少女になろうなんて、そんなのあたしが許さない。

ぶっ潰してやるさ」

一息に言い切り、また大きく息を吸う。そして思いの外さっぱりした顔で振り返った。

「あんただって、いつかは命懸けで戦わなきゃならないときが来るかもしれない。
その時になって考えればいいんだよ」

まどかが隣を見れば、杏子と似たような笑みを浮かべるあきらがいた。なんだかとても納得してしまい、素直に頷く。


ふいに、空気の流れが変わった。

「気付かれたな」
「……構えろ、来るぞっ」

とびらをいくつも潜り抜けて、3人は主役の待つコンサートホールへと飛び込んでゆく。


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