流転の謳歌。

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「えっ?さやかがいない?」

自称他称ともに昼間ひきこもり、夏目あきらはとある一本の電話に目を覚まし、覚醒し、そして外に出た。

心当たりがありすぎて舌打ちをした。どこかでほむらがぼやいていたのを思い出す。「美樹さやかは魔法少女に向いていない」まったく、その通りだったのかもしれない。
彼女を救えなかった事にどうしても憤りを覚えた。自分の行動のどこに間違いがあったのか。どうすれば彼女の崩壊を防げたのか。そんな事ばかりを考えてしまう。

昨日結界から抜け出した4人の間には何ともいえない薄気味悪い空気が流れていた。おまけにあれほど消耗し、自分の肉体の修復もしたさやかはグリーフシードを杏子に投げ捨てていってしまったのだ。

あの様子では、さやかは自分がまずい方向に陥っている事に気付いてないだろう。彼女はけして間違っていない。ただ彼女があまりに優しくまっすぐすぎたのだ。



「あきらさん……」

約束の場所で落ち合ったまどかの目は腫れ上がっていた。きっと友人のために夜通し泣いたのだろう。
類は友を呼ぶとは本当に上手く言ったもんだ。

「ううっ…昨日……私、私…さやかちゃんにひどい事言っちゃって…」

よしよしとまどかをなだめる。ゆっくりでいいから素直に、きちんと言えよと諭すと、まどかは深呼吸を交え、時々嗚咽を漏らしながら語った。

昨日の魔女との戦いについて口を出した事、それがさやかを怒らせてしまった事、彼女の為にならない、と言ってしまった事…そして、さやかが雨のふりしきる中をまどかを振り切り走り去ってしまった事……
最後まで言うと堰を切ったように声を上げて泣き始めた。

「自分を責めるなよ」

ベンチに腰掛けたまま、しかし、まどかの顔を直視できないまま言う。

「何にもまどかは間違ってない」

ペットボトルを飲み干して、それをゴミ箱に投げ捨てる。今日はもう、まどかは家に帰りな。そう言って立ち上がった。まどかはやはり泣いていた。優しすぎると溜め息を吐いてハンカチを渡す。そしていよいよ背を向けた。不安そうに自分を見るまどかに微笑み返す。














――間違っていたのは、私だ



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