流転の謳歌。
□08
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「……やっと見つけた」
「どうせそうだろうと思ったけど、やはり君は僕のところに来るんだね。
みんな美樹さやかを探している。行かなくていいのかい?」
「みんながさやかを探しているから、私がこっちにきたんだよ」
あきらは黒い鎌をキュゥべえに突き付けた。
「さやかを戻せ。元の人間に」
「それは無理な注文だよ。なぜならこれは彼女が選んだ道だから。
唯一可能性として残っていた鹿目まどかの契約という道も閉ざされた。彼女は永久に魔法少女だよ」
ぐ、と唇を噛む。鉄臭い臭いが鼻を付いた。痛みを感じたのはその少し後。
「さやかはもう限界だ…さやかという存在も、ソウルジェムも」
言えば言うほど憎らしくなってくる。キュゥべえに騙されて、正義の味方になりたくて魔法少女になって…なのに、彼女の本心はきっと世の中すべてに裏切られた。
さやかの心は真っ暗なはずだ。
「許さねえよ。あんただけは絶対」
その首をはねてやろうと鎌を持つ手に力を込めた。肩越しにこちらを見るキュゥべえの小さな赤い目が何とも不気味だった。
次の瞬間、肌が震えるような大きなエネルギーを感じた。
はっとなって町中を見ると、もう終電も過ぎているであろう時間帯なのに駅が馬鹿みたいに明るい。
その凄まじさに、キュゥべえの存在を忘れるほどだった。
「…おや、始まったみたいだね」
「てめえっ…」
そのエネルギーからは黒い気配が四方八方へと飛び回っている。あきらは身体の震えを必死に押さえながらキュゥべえに掴み掛かった。何故ならあきらは知っているからだ。この気配を知っている。
もちろん魔女の気配だ。
だが、それだけじゃない。
「何をした…!」
「……」
キュゥべえはまるでそんなあきらに飽きているかの様に言った。
「この国では成長途中の女の事を“少女”って呼ぶんだろ?だったら」
どくり、と心臓が跳ねた。猛烈な頭痛と吐き気がして、それでも体に異常はなくて。
くらりと目眩がして膝から崩れ落ちると、頭上からキュゥべえの声が降り掛かった。
「やがて“魔女”になる君たちのことは、
“魔法少女”と呼ぶべきだよね?」