流転の謳歌。

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気配を感じたがあきらは振り返らない。
面倒くさそうにあくびをすると、何らいつもと変わらない様子で靴に足を突っ込んだ。

「君は僕に文句を言わないんだね」
「もう言うのすらだるい。アンタにはすでに一回騙されてるしな」
「意外と理解があるんだね、夏目あきら」
「勘違いすんなよ。私が理解してんのはあんたらの理屈じゃなくてあんたという存在だ」
「同義じゃないか」
「違うね。月とすっぽんくらい」
「何で月とすっぽんを同列に並べられるんだい?僕には訳が」
「もういいから黙っててくれ」

目を閉じて視神経の辺りに注意をするとやはり気配がする。どこかで誰かが魔女と戦っている。そして、おそらくさやかだ。
何で分かったのかと聞かれれば、それは本当に憶測――なんとなく、の域を出ないが。

「質問もないのかい?」
「………」

ソウルジェムを見詰める。私が私を見ていると思うと、単純に奇妙だった。

「ないよ」

言い放って扉を閉める。キュゥべえは住人に成り上がった元居候の背中を見送りながら静かに言う。

「…まあ、今のところだろうね」



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