流転の謳歌。

□06
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「ワルプルギス…ねえ」
「逃げるかい?」
「まさか。つーかどっから湧いて出た」

ベットに大の字になりながら寝そべるあきらを見て、キュゥべえはやれやれと首を振った。

「やる気あるのかい?」
「何かお節介キャラだよな、あんた最近」
「それは君の性格上そうならざるを得ないからさ」
「…私ってそんなキャラ?」
「最近はね。マミが死んでからどうにも戦う事を放棄しそうで僕は嫌なだけだよ」

言えばあきらはハッと鼻を鳴らした。言いたい放題言ってくれるが、残念ながら正論だ。事実は残酷であるのが正解で、甘くみえるのが虚像。

「…しゃーないな、行くか」
「それでこそ魔法少女だよね」
「はいはい」

目を閉じて祈る。ソウルジェムの光が全身を包むイメージをした。
ら、突如黒いその宝石が牙を剥いた。

「……ッ!!」
「あきら?」

あまりの衝撃にくらくらする。またあの全身に力が入らなくなる感じがして、体勢を維持出来なくなり膝から崩れ落ちる。この感覚はいつもなら、夢から醒めて、それからの――

「身体が動かない?」
「ぐ…あ……」

唇も引きつって自由が効かない。喋る事も今は無理そうだったのでできるだけ必死に頷いた。
床に顔を擦り付けて、今は目線はキュゥべえよりも低い。影が落ちている彼の赤い目には、無様な自分が映っていた。

「……あきら、もしかして最近こんな事があったかい」
「…ッ…ねえ、まだ、まだ先だよな……四ヶ月は、あるんだよな」
「そうだね。僕と君が契約したのはまだ先月の事だ。ソウルジェムが終わりを迎えるまで、人間を基準とした時計でいけばあと四ヶ月きちんとあるよ」
「そうか…なら、いいんだけど」

大きく息を吸って、少しずつ吐きながら指を折り曲げる。初めの1、2回はがちがちに固まって至難だったが、それもすぐに柔らかい動きになっていった。後は特に時間を掛ける事無くリハビリ完了。とてつもなく長い時間に思えたが、時計を見ればたかが5分にも満たない。
床に落ちたソウルジェムを拾い上げ、少し抵抗があったがもう一度魔力を込める。先ほどが嘘のようにあっさりと変身は遂げられ、あきらはそのまま玄関に向かっていく。

「キュゥべえ?」

いつもなら嫌がる己を無視してでも肩に飛び乗ってくる生物はいない。
後ろを振り返るとぽつん、と彼は動かずにいた。不意にぞくりとした寒気が襲う。
さっきとは違う感覚で身体が強張り冷や汗が伝う。

「…あきら……気を付けた方が良い」
「は?」
「君の最近の消耗が激しいのは、事実だ」
「え、な、それっ」

驚きに目を見開き硬直するあきらが武器を突きつけキュゥべえに接近しようとした刹那、何の前触れもなく玄関が開いた。

「あきらさん!!さやかちゃんが!!!」


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