流転の謳歌。

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声がうまく聞こえない。うっすら涙を浮かべながらさやかの名前を呼び続けるまどかの声もよく聞こえない。
ただ、脳に直接響いてくるキュゥべえの淡々とした口調だけが、あきらの脳内を支配する。

「君達魔法少女が身体をコントロールできるのは、せいぜい100メートル圏内が限界だからね。
肌身離さず持っていれば起きる事故じゃないんだけど」
「100メートル?何のことだ?どういう意味だ?」
「嫌だよ…さやかちゃん!起きてよ!!」
「まどか、そっちはさやかじゃなくて、ただの抜け殻なんだって。

“さやか”はさっき、君は投げ捨てっちゃったじゃないか」

ソウルジェムが、重みを増した。

「ただの人間と同じ壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願いできないよ。
君たち魔法少女にとってもとの身体なんていうのは外付けのハードウェアでしかないんだ。
そして本体としての魂には魔力を効率よく運用できるコンパクトで安全な姿が与えられている。

魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね、君たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなのさ」

そう言うや否や、杏子はキュゥべえの長い耳を鷲掴む。

「てめえ…ッ……それじゃあアタシ達、ゾンビにされたようなもんじゃないか!!」
「むしろ便利だろう?
心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、魔力で修理すればまた動くようになるんだから。ソウルジェムさえ砕かれない限り、君たちは無敵だよ。弱点だらけの人体よりも、よほど戦いでは有利じゃないか?」

聞こえない。何も聞こえない。動けない。身体ががちがちに固まっている。

「…ひどい……ひどすぎるよ…」

まどかの細い声が聞こえた。勿論、かの生物はどれに心動かされる訳がない。開き直った様にも見える口調で言ってのける。

「君たちはいつもそうだね。事実をありのまま伝えると決まって同じ反応をする。
どうして人間はそんなに魂の在処にこだわるんだい?

訳が分からないよ」

ほむらが戻ってくる。その手には光輝く“さやか”がいた。
彼女が近づくと、さやかの目に徐々に生気が戻ってくる。この時の表情を、未来永劫忘れないだろう。




「………どうしたの…?」


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