流転の謳歌。

□06
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「何しているの、2人とも」
「げっ…」
「……ほむら」

そこまできてやっとあきらも現実に帰ってくる。一瞬にして自分が身勝手な上にとんでもなく、おまけに自分らしくもない行動をしていた事を理解し急激に恥ずかしくなった。

「馬鹿な事はやめなさい。あなたたち共闘するって知ってるでしょ?それに…」

彼女の黒い瞳は呆然と先ほどの戦いを見詰めていたさやかに移った。そして冷たい視線を杏子に送る。

「美樹さやかには手を出すなと言ったはずよ」
「あたしじゃなくてあっちがふっかけて来たんだぜー?」
「同じよ、私が相手する」
「……フン。じゃあ30秒だけ待ってやるよ」
「つーかやめろよ」
「十分よ」
「「マジかよ」」

3人の会話を聞いているうちに、さやかも徐々にあの憎しみを思い出してきたらしい。
更に追い打ちをかけるようなほむらの一言が、どうやら彼女に火を点けてしまったようだ。苛立ちに顔を歪めながらポケットの宝石に手を伸ばす。

「……な、なめんじゃないわよ…!」

そして水色に淡く光るそれを仰々しく取り出した。
まどかはそれをしばらく唇を噛みながら見詰めていたが、やがて思い立ったように駆け出した。

「さやかちゃんごめん!」

その掲げられた腕からソウルジェムを奪い取り、歩道橋の欄干に駆け寄ると道路に向かってそれを目一杯放り投げた。
水色の光がどんどん小さくなり、トラックの荷台に乗せられて遠くへ運ばれていくのが確かに見えた。杏子と2人で並んでまどかの行動に目を見張っていた。その場にいた誰もが、その現実味のなさというか、まどかのとった行動の衝撃に動けずにいた。暁美ほむらを除いて。

「な…まどか!あんた何てことを!!」
「だってこうしないと……!」

異変は、ここから始まった。

ぷつん、と糸が切れてしまったかのように突然倒れ込むさやか。それを訳が分からないまま受け止めるまどか。

「え?さやかちゃん?どうしたの?」
「…やれやれ、よりにもよって友達を放り投げるなんて、どうかしてるよ、まどか」

その場から離れず、じっと2人を見詰めるキュゥべえ。

「……」

静かに歩き、彼女たちの前にひざまずき、さやかの首を掴む杏子。
まどかが慌てたようにやめてと叫ぶが、それを完全に無視しながら杏子は続ける。
あきらは小刻みに震えていた。だって見れば分かる。自分の友人だって、マミだって、同じような空気を纏っていた。
ドクンドクンと早鐘を打つ心臓が五月蠅い。恐怖しながらも、自分は杏子の次の言葉を待っていた。

「……おい、どういうことだ?
こいつ……死んでるじゃねーかよ!?」

……異変は、ここから始まった。


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