流転の謳歌。

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「まあ、あの、あれだ」

あきらは息を吸い込み、そして吐いた。怒鳴りそうな勢いを無理矢理押さえ込んだ感じだ。
が、その勢いは止むことなく、むしろドスの効いた声になって表れる。

「説明しろや」
「えへへ…」

寝巻きのままベットに横たり、照れたようにごまかし笑いを浮かべるさやか。
おまけにそれが魔女との戦いでついたものではないと言ったから、溜め息しか出てこない。
そもそもさやかが魔法少女になる事すら反対していたのに。まあ、現状肯定主義だからそんな概念昔の産物だが。

「……」
「だってさ!!昨日喧嘩吹っかけてきた奴がすげー腹立つの!!」
「はいはい」

机の上にそっと置かれた水色のソウルジェムを手に取る。魔力を込めると奥の方で少し渦を巻いていた穢れも綺麗になった。

「おっ!!身体が!!身体が軽い!!」
「調子乗ってすぐ動くなよ、開いたりすんのもアレだし、今日は一日休めや」
「はいはーい」

お気楽だ。昨日痛い目みたというのに懲りないらしい。中々いい性格している魔法少女だ。
まあ、彼女ほどに信念の強い人間ならば仕方ない、が。

「……さやか」
「はい?」
「あんたは、やっぱり他人のために願いをつかったんだよな」
「あー……」

真剣に彼女の眼を射抜けば、やはりというか気まずげに逸らされた。
マミの話の流れからして、確かにあきらには言いにくい事かも知れない。そしてそれが原因できっと衝突したのだから、あんまりいいタイミングではなかったのだろう。だがしかし空気読めないんだから仕方ない。

「はい…幼なじみの腕を……」
「そうか…」
「責めないんですか?」
「さやかは私に自己否定しろっての?」
「えっ!!」

思いの外素っ頓狂な声を上げるから悪戯心が湧いてしまう。ニヤリと歯を見せるように笑いながら後ろ手に振り返った。

「私も間接的だけど他人に使ったようなもんだよ。まあ、多少自分にも見返りはくるけどね」
「じゃあもしかして今…」
「そう、ソウルジェムの穢れを取り除いたのは私」

何だか見せつけているようで嫌な感じもするが、わりと際だつものだから仕方ないと最近は諦めてきている。さやかの反応も今までと同じように予想通りというか、目をきらきらさせてぱあっと花を散らすアレだ。

「すっごい!!それじゃああきらさんがいればいつもコンディション最高ってこと!?」
「まあ、そうなるな」
「うわ!!すごいすごい!!」

馬鹿の一つ覚えみたいにすごいを連呼するさやかを見ると、またあの時みたいに――マミや、まどかのときみたいに、薄ら寒くて、どうしようもなくもの悲しくなってくる。

「でもね、さやか」
「……?」


 「あんまり長い間は、期待しないほうがいいよ」


「…あきらさん?」
「私に頼らず、自力で魔女狩れってこと」
「ああ、なんだ……」

ぎこちない笑顔は、いつまでもあきらの網膜に張り付いた。


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