流転の謳歌。

□05
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「話があるの」
「おう、珍しいな。そっちから来るなんて」
「……」

真夜中の来訪者である段階で、すでにあきらはまともな存在を期待していない。
巴マミの家に訪れた久方ぶりの客人は、警察官でもなく、暁美ほむらだった。

「要らないわ」
「そう言うなよ、練習させて」

というわけで張り切ってお茶を煎れようとする。早く本題に入りたいと言わんばかりにそわそわしているほむらを横目で見ながら、マミがいつもやっていたようにゆっくり作業をする。
耐えかねたように、リビングから声が聞こえた。

「……夏目あきら。あなたの戦闘力を見込んで話があるわ」
「はいはい。お茶菓子は何がいい?」
「ッふざけないで真面目に聞いて!!」
「………」

あきらは表情を変えずにテーブルに着く。ほむらは思わず声を荒げた事を失態と思っているのか、どこか気まずそうな表情だ。あきらはそんな彼女に言う。さりげなく彼女を奥に座らせて、逃げ道がないようにして。

「ほむら…やっぱ、あんた分かってないよな」
「っ、何を」
「バレバレだよ。あんた私にだけ態度が違う。
みんな同じだったよ。さやか、マミ、キュゥべえ、顕著なのはまどか。なんでこいつらには達観視した風な物言いができるのに、私にはできてない?」
「…それは」
「何かあるなら言ってくれよ。ひょっとしたら何かあるかもだし」
「………あなたには、関係ないわ」

どんな答えが返ってきてもありかなとは思っていた。だからあきらは何も言わない。ほむらは膝の上で拳をつくり、俯きながら目だけを動かしてこちらを睨んだ。



「……分かったよ
で、話は?」
「……二週間後、『ワルプルギスの夜』がくる」
「…成る程」

『ワルプルギスの夜』――特大魔女。
一人では敵わない。誰がやっても、自分の知りうるなかには、間違いなくいない。だから共闘。当たり前だが、賢い手段だ。
自ずとリビングには緊張した空気が流れる。

「え?2人だけ」
「いいえ。とりあえずもちかけているのはもう一人――言っておくけど、美樹さやかではないわ」
「あー、うん。まあね」

二週間後。何故ほむらがそんな事まで知っているのかこの際気にしない。ただ、あきらはやけに心配だった。ほむらに言っても分かるはずない――四ヶ月後のはずのリミットが、何だかすぐそこにまで迫っている気がしている、だなんて。
そんなわけないのに。

 二週間後が運命の日になる事は、本能的に理解していた。


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