流転の謳歌。

□03
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「あれ?」
「あなたっ…」

暁美ほむらだ。ただし縛られている。この黄色い拘束具に見覚えがあるあきらはどんどんと並べられていくフラグに顔を強張らせた。どうして、なんて聞く前に彼女はもの凄い形相で、噛み付くように言った。

「夏目あきら!!今は何でもいい、早くこれを解きなさい!!」
「え……」
「いいから早く!!」

マミがほむらを拘束した理由は何となく推測出来る。元々気にくわないようであったし、如何せん彼女には盲信的な部分が少なからずある。だからいい人なのだが、言っちゃ悪いが狭いところもある。そんな性格だから、こんな必死な表情をしている暁美ほむらを拘束したんだろう。……後先考えずに、だ。

ぱらりと紐が落ちる。

「急いで!!今回の魔女は訳が違うの!!」
「お、うよ」

紐の切れ端を掴むと、それと自身の感覚を頼りに彼女を追跡する。途中使い魔はまったくといっていい程出現せず拍子抜けしたが、いたるところに残った弾痕とマミの魔力の残り香を感じれば彼女の戦闘シーンが容易に想像できる。かなり好調だったようだ。

ひょっとしたら、本当に、自分の杞憂で終わるかも知れない。

淡い期待を抱きながら、心なしか軽くなった足で走り抜ける。

甘ったるい匂いが鼻をくすぐる、まるでお菓子の国のような空間を飛び抜け、板チョコみたいな可愛らしい扉を開けた。

それまでは、期待していたんだ。

「マミ!!」

硬直した。

「え……」

彼女は。巴マミは。微動だにせずその時を待っているように見えた。
宙に浮いた拘束された使い魔と、その口から出てくる信じられない大きさの“魔女”。

「あ…」
「……あきら?」

目だけがこちらを見る。涎の滴る三角の刃が立ち並ぶ口の中に消えながら、彼女はわずかに唇を動かした気がした。

       『ごめんね』



 手に掴んでいた黄色が――巴マミの色が、一瞬にして黒く染まり散っていった。


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