流転の謳歌。
□03
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「……」
というわけで、夢オチ。まあ定期的に見る夢であるから別段不思議とは思わないが…
「……」
手にじっとりと汗を掻いていた。首筋もべたついていて気持ち悪い。顔が熱い。ただ腰から下が鉛のように重たくて、感覚がなくて、冷たかった。時たまに夢を見る。黒い悪夢を見る。そして、起きるとしばらく身体が動かない。もうしばらくは無理だろうと思って首を捻った。
「……あれ?」
マミがいない。気配すらない。いつもの良い匂いも、暖かい匂いもなくて、しんと音が聞こえてきそうな程の静けさが今日見た夢とリンクして鳥肌が立った。
ベットサイドにシフォンケーキが置いてあった。飲み物はなく、カップだけ。気が利く子であるからポットまで持ってきてあった。
下半身を引きずるようにしてそこまで辿り着く。食い意地だけは張っているから仕方ない。ケーキにかけてあるラップを取った時、ふと皿の下にメモが挟まっているのに気が付いた。フォークを置いて取り出す。
『あきらへ
おはよう。うなされていたけど大丈夫?朝ご飯置いておくからね。あと、魔女退治に行ってきます マミ』
順序が逆だろ、と笑った。相変わらずただの優しい子だ。走り書きで珍しく字が潰れてしまっている。
マミ、という名前まで。
「……」
肩口が相変わらず薄ら寒い。嫌な予感がした。自分のこういった類の勘に全信頼を置いているあきらにとって、最悪だった。
立ち上がる。何とか動く。本当は省エネ主義であるためギリギリにならないと変身はしないのだが、今は少しでも急ぎたかった。
あきらは走る。自分の嫌な予感を今回こそは否定するために。