流転の謳歌。
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コツコツとブーツの底が石畳を甲高く鳴らす。
まるで何かを誘うかのように。
カツン!!
ふと一定間隔で刻まれていた音が途切れる。歩みを止めたその少女は前に出そうとしていた足を横に開き、腰を落として腕に力を込めた。
「……来る」
刹那、少女の黒檀のような頭髪がふわりと舞った。後頭部の髪飾りがしゃかしゃかと心地よく響く。それが楽しいのか、ふっと少女は笑って右手をつき出した。
悲鳴のような衝撃波が全身を貫いた。萎縮してしまいそうな代物だが、これが笑い声であると知っている彼女にとっては腹立たしいだけである。
「何が楽しいんだか……っ!!」
突き出した右手に黒い流体が集まってゆく。少女の魔力によって徐々に束ねられたそれは細くなめらかな曲線を描いていく。その棒を持ってぐるりと回転させれば、先端には半月上の巨大な漆黒の刃が現れる。
そして少女は笑う。自嘲気味に笑う。
「かかってこい!!お前はなんの魔女だ!?」
呼びかけに応えるようにまた絶叫。世界が反転するような心地を覚えて刮目すると、そこにはまだまだ小さな少女がいた。少女の形をしたものがいた。それが何なのか重々承知している彼女はその程度で躊躇ったりしない。
お手玉したり、おままごとしたり、何とも子供らしい遊びにつきあっているのはしかし、酷く醜い容貌の使い魔たち。
―――ああ、悲しい。魔女というのは、やはり悲しい
「終わらせてやるよ」
白い歯をぎろり、むき出しにしてケタケタ笑い初めて魔女に向かって、今日も彼女は漆黒の鎌を振り下ろす。