─悩ましの磊落者─
アセリア暦4202年某日。
世界の脅威、人類の敵とされている魔王。
ダオス。
彼の人の住まう城内のとある一室にてデミテルとジャミルは、人間界掌握の手筈を算段していた。
彼等は、人に似た姿をとってはいるがれっきとした魔族である。
本来であれば、瘴気渦巻く魔界にそれぞれ居を構えている2人が、何故人界に、魔王と目されている人物の元へ身を寄せているのかというと。
魔族は、マナの恩恵により人間が我が物顔で闊歩している地上を蹂躙し、彼等魔に属する者達にとって厄介なモノに他ならないそれを枯渇させ魔界へと造り変え、天界へと攻め入る土台とするべくそこかしこで暗躍している。
そのため、ダオスを隠れ蓑に活動する事が好都合だったのだ。
「…では私は、手始めにハーメルを壊滅させる事にします」
幸い、その街にはミッドガルズの魔科学研究所から逃げるように引っ越したスカーレット夫妻がいる。
ダオスの名の下に滅ぼしても支障はないでしょう。
仮初めとは言え、師弟関係を結んだ者とは思えない、冷酷な口調でデミテルは策を述べた。
「それで…あなたはどうするんですか?」
長時間の論議にいささか疲れたのかジャミルは椅子に大きく寄りかかり、だらりと手を下げ顔は天井を見上げたままため息をもらす。
「…そうねえ…あたしは」
天井の一点を見つめながらしばらく考えたのち、だるそうに腕を回し凝り固まった肩をほぐしながら面をデミテルの方へと戻した。
「あたしは、アルヴァニスタの動きを止めに、王室に潜り込むわ」
ミッドガルズに手を貸されても面倒だし。
彼女は別段秘策があるわけでも無い、あっけらかんとした表情でこともなげにそう言いのけた。
「…随分とまた、大きく出ましたね」
「平気平気。なんとかなるって」
目的が達成出来ればそれで良い。
細かい事は気にしない。
そう言うかのように彼女はそぞろ笑んだ。
─全く。あなたは本当に短絡的というかなんというか。
デミテルは、一抹の不安を覚え長嘆息をついた。
2010年1月11日 了。
■お題はこちらからお借りしました。
Alstroemeria様
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今回はまさかのデミジャミです。
何だかんだでこの2人、良いコンビだと思います。
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