memory#2. |
刹那的衝動───。 空虚だ。 何をやっても、何処に居ても───意識が勝手に探してしまう。 そして、見付からない事に酷く落胆する。 解っているはずなのに───。 頭では解っているはずなのに、それでも無意識に探してしまう。 あの存在を───。 あまり回復しない視力に、その内に不便を感じなくなっていった。 「・・・深刻な同化現象でもないけれど・・・」 病状が好転する事は、多分、難しいと思うの。 そう複雑そうに答えた島の筆頭医師でもある千鶴が、肩を落とすのが雰囲気で解り、大丈夫ですから、と逆に元気付けた。 「・・・俺、約束がありますから・・・大丈夫です」 この眼が見えない事は、還ってきた彼奴の顔も何もかも見えなくて。それは、ちょっと寂しいけれど───、還ってきてくれるのなら、自分の処に還ってきてくれるのなら、それなら良いと思う一騎。 「一騎くん・・・」 心配そうな千鶴の声に、一騎は出来るだけ安心させられる様に、ふんわりと微笑った。 今は、あの時、二人だけで交わした約束だけが、今の一騎を心の底から支えているかけがえのない拠り所だから。 日課、と言うよりもつい無意識に足が向いてしまい、気付く頃には父である史彦に心配されたり、真矢が迎えに来てくれる事もあった。 ひとり山。 どうしても一人になりたくて、皆に危険だから、危ないからと心配されてもここに来る事だけは止められなくて。 陽の暖かな空気と陽光を感じれば、見えない空の状態を思い、また虚ろになりそうな自分に緩く頭を振り、意識を反らす。 最近はその繰り返しだ。 これが運命だ、と言うのなら何て過酷で残酷なのだろうか!と罵倒してやりたくなる。 還してくれ───! そう、今でも泣き叫びたい程に、虚しくて何もしたくない、考えたくもない状況に陥りそうで───。 それでは、他の人の迷惑になってしまう、と今の現状を叱るもう一人の自分が居て、何とか奮い立たせては今を危なげに維持している。 「・・・・・・ |