#1. しょうしんりょこう、にでかけてみつけました。 |
───総士ぃ・・・。 未だ総士との辛い別離から傷付いた心が癒えないまま、一騎は数日を何とか過ごしていた。 本島とは反対側にある、通常は誰も近寄らない島、裏島。 一騎は泳いでここまで来たが、今の一騎は視力があまりない。北極ミールを受け入れ、同化した時に北極ミールは一騎に祝福を与えているが、一騎が気付く事はなかった。 しかし、見えないなりに何とか進めた事が不思議だったが、その事にあまり疑問に持たない、と言うより、疑問を持つ事さえも今の一騎には難しい。 総士を想っては、泣いて。 何をするにも総士との記憶が鮮明過ぎて、涙を誘ってしまう。 只でさえも、一騎は総士の事には弱いのに。 「そぉ、し・・・」 又、一騎の涙を誘う。 一人で泣いていると、遠くで緊急のサイレンが鳴り響いているのが聞こえる。 悲しくても敵はそんな事、構っちゃくれない。 一騎は涙を止めようと、必死に手の甲や指で涙を拭うも、こちらも中々止まらない。 そうこうしている内に。 「・・・・・・?」 見上げた先、上空に展開されているヴェルシールドを中和しているフェストゥムの姿がうっすらと見える。 まずいと一騎が思い、この場から離れ様と動くよりも早く、フェストゥムは第2ヴェルシールドまで、凄まじいスピードで中和すると、そのまま何かを落とし───一騎のあまり見えない眼には、何だかを投げ付ける様な動作が見えなくもなかったが───何時の間にか消え去っており、何事もなかった様に、空は静まり返った。 「・・・・・・あ、れ?」 一騎が小首を傾げるも、もうどうやっても今まで通りな平穏な空に、考えても仕方がないと一応、納得してみる事にする。 ───フェストゥム、だし・・・。 しかし、そうなると先程、投げ込んだだろう物も気になってくる。 一体、何をこの竜宮島に投げ込んだ?と言うのだろうか。 ───ゴミ・・・って事は、ない、だろうけど・・・。 フェストゥムがゴミ───。 一瞬浮かんだ出来事に、一騎はくすりと笑いながらもう一度、フェストゥムが出没した上空に眼を凝らした。 朧気に映る瞳に、何か空から降ってくるのが見えなくもない。 「・・・・・・?」 思わず、一騎は腕を広げて落下物を受け止め様と試みるも、この視力の落ちた瞳にずっと見続けると言う動作は辛く、気配で落下物を何とか受け止めた。 ふよん。 何となくだが、柔らかい適度な大きさ───この場合、ちまさと言った方が良いのかもしれない───が温かみのある体温と共に腕に伝わってくる。 フェストゥムかもしれない。 そう一瞬思ったが、思わず受け止めてしまい、まずいと思った一騎は、恐る恐る色素を失った朱色の瞳を開けた。 「・・・・・・」 朧気に見える瞳には、自分に都合良く見えるらしい。 ───そぉ、し・・・? 小さいけれど、確かに一騎が知っている、大切な存在の面影がぼんやりとだが伺える。 「総士・・・?」 眠る様に眼を閉じている、この小さな物体に、小さく彼の人の大切な名前を呟いた。 「・・・・・・」 うっすら眼を覚ました小さな物体───フェストゥム、と呼ぶのだろうか、と悩まなくもない───は、一騎を視界に入れるとふうわりと微笑み、腕を伸ばして一騎に抱き付いた。 「・・・そぉ、し・・・」 紛れもない、一騎が探し求めていた皆城総士に姿形はそっくりだ。が、総士がこんなにミニチュアサイズのはずがない。 「・・・・・・やっぱり・・・、フェストゥム?」 一騎が小首を傾げるのと同時に、ミニマム総士も一騎と一緒に小首を傾げる。 「・・・・・・ぷ、はははっ」 可笑しくて、久し振りに笑っていた。 だって、何時ものあの真剣な表情で、一騎と同じ様に小首を傾げているのだから。しかも、体重がその頭の方に傾いている所為か、微妙に眉間がぴくぴくしている。その体制のままでいるのは、かなり大変らしい。 しかし、姿形が何とも可愛らしいのだ。 「・・・どのみち、もう父さん達にはバレているだろうし」 もう一度、視線をミニマム総士に戻し、一応聞いてみる。 「お前・・・、俺と一緒に来る、か・・・?」 「・・・・・・」 すると、にっこりと笑ってコクリと頷いた。 「・・・可愛いな・・・。そうだ、お前の名前を考えないと・・・」 フェストゥム?だからか、何も着ていないから寒そうだ。これが総士なら、尚更だろう。 「総士そっくり・・・みたいだから・・・、そうし、って・・・駄目かなぁ?」 ミニマム総士は、一騎の瞳をじっと見ている。 「・・・やっぱ他のを・・・」 すると、ふるふると否定し、一騎の着ているTシャツを引っ張り、にこっと笑った。 どうやら、先程の名前を気に入ってくれたらしい。 「良かった。・・・・・・そうし」 愛惜しそうに名前を呟くと、一騎はそうしの頬に頬すりをした。 「二人で、検査受けような?」 言うと、ちょっと嫌そうな表情を浮かべたが、にっこりと笑いながら頷いてくれた。 これから、新しい生活が始まる予感がする。 |