夢
□たべたいくらいあいして、る
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……目が離せない。
男は私と視線が合った時にこれでもかと目を見開いた。見てはいけないものを見つけた子供のように、私は脂汗を噴き出させて彼を見つめる。
……目を離してはいけない。
本能だった。男は渇いた唇を開いて何か言った。聞こえない。
けだるい午後の図書館の一角。通っているというにはおこがましい頻度で訪れているそこで、私は彼に会った。
「あなた、どこかで会いましたかな」
「いいえ」
初対面だ。男は納得いかなそうにそうですかと呟いて視線を外す。少し長めの前髪がさらりと流れた。
「…………」
私は何か違和感を覚えてそれを目で追う。しかしすぐに止めた。失礼ではないか。
「じろじろと……失礼しました」
「いや、こちらこそ」
すれ違う肩が触れた。たったそれだけのはずなのに私は床に倒れ伏した。痛い、痛い痛い痛い。
男が何か言っている。手が伸びてきて、私の。私の。
目が離れていく。
転がる。
……目が離せない。
男は私と視線が合った時にこれでもかと目を見開いた。
「お手合わせ願う」
「一騎討ちですね。お手柔らかに願います」
鋭い斬撃に食いしばる歯が砕けた。血の味が生温く口に広がった。受けるのに精一杯で返せない。
一歩、ニ歩とさがる。
ああ、三歩以上はさがりたくないなあと踏み止まるとまた歯が砕ける。
男が笑った。
見てはいけないものを見つけた子供のように、私は脂汗を噴き出させて彼を見つめる。
……目を離してはいけない。
本能だった。男は渇いた唇を開いて何か言った。
「終わりだ」
けだるい午後の図書館の一角。通っているというにはおこがましい頻度で訪れているそこで、私は彼に会った。
「あなた、どこかで会いましたかな」
「いいえ」
初対面だ。男は納得いかなそうにそうですかと呟いて視線を外す。少し長めの前髪がさらりと流れた。
「…………」
私は何か違和感を覚えてそれを目で追う。しかしすぐに止めた。失礼ではないか。
「じろじろと……失礼しました」
「いや、こちらこそ」
すれ違う肩が触れた。たったそれだけのはずなのに私は床に倒れ伏した。痛い、痛い痛い痛い。
男が何か言っている。手が伸びてきて、私の。私の。
目が離れていく。
転がる。
首が断たれ、目玉が遠くへ飛んだ。最後の風景にいる男は美しい鎧を纏い、肌はあの青白い顔しか見えなかった。
「どこかで会いましたかな」
「いいえ」
二度目だ。幾千と転生を繰り返す中で二度目の出会い。
「(そなた)」
「(あなた)」
ちいさなよかんがする。またくりかえされるうんめい。
ぎ
りぎり
とちからまかせにわたしのくびをとったあなたのく
るったいしせん
がいっし
んにそそがれたわたしのまなこはまたむずかゆくなり、そして
きれて、ころげてじ
ゅうをうしなった。
目が離せない
(それを恋だと誤解した)