ヘッポコ丸が腕を切ってから早十日。相変わらずヘッポコ丸は眠り続けたまま。本来ならとっくに目を覚ましているはずなのに、と医者が苦々しい顔で言っていた。見解として、何か精神的ショックから、目覚めることを拒んでいるのではないかと言われ、ボーボボとソフトンは否応無しに破天荒とヘッポコ丸の口論を思い出した。



自傷の直接の原因(と考えられている)破天荒が放った一言。あの一言は、ヘッポコ丸の心をズタズタに傷付けた。目覚めたくないと思うのは、もしかしたら当然なのかもしれなかった。







今日の見舞い当番はボーボボとソフトンである。「へっくんが起きたら食べさせてあげてね」と渡されたビュティ特製フルーツサンドを見舞い品として持ってきている。一週間が過ぎた辺りから、ヘッポコ丸が目を覚ました時にお腹を空かせているだろうからと、ビュティは常に軽食を作ってくれているのだ。この日のフルーツサンドも同様の理由である。勿論、ボーボボとソフトンの分も作られている。さすがビュティ、抜かりがない。ちなみに、ヘッポコ丸が目覚めなければ、このフルーツサンドは二人の胃の中に収まることになる(ここ三日間も同様の処置が取られている)(食べ物は粗末にしちゃいけません)。





「破天荒と天の助、ケンカしてないと良いんだけどなー」




フルーツサンドを頬張りながらボーボボが言う。サングラスに隔たれた両眼はヘッポコ丸を見ているのか窓の外を見ているのか、判別出来ない位置にある。ボーボボの言葉に、ソフトンは「そうだな」と短く返し、自身もフルーツサンドを口に運んだ。新鮮なフルーツがふんだんに使われたフルーツサンドは、甘味と酸味が絶妙なハーモニーを生み出しており、とても美味しかった。




「天の助の奴、あそこまで反対することないだろ。いくら今回の件を破天荒のせいと決め付けているからといって…」
「決め付けているというか、事実だ。仕方無いだろう。それに、天の助は啖呵を切ったからな。破天荒にヘッポコ丸を任せられないと」
「あぁ、言ってたなそういえば」





破天荒の決意を聞いた一週間前。あの後仲間の元に戻った破天荒とソフトン。破天荒はその場で、今回の原因と考察、謝罪の言葉を述べた。




そして――それを踏まえた上で、ヘッポコ丸を愛すると決めたことを、公言したのである。




それに激しく噛みついたのは天の助だった。原因を明かされた時点で怒りの沸点が振り切れそうだった天の助は、破天荒の告白を聞いて完全に頭に血が昇ったのだろう。いきなり破天荒を殴りつけたのだ。


慌てて首領パッチが天の助を抑えたが、天の助は尚も破天荒に殴りかかろうと暴れた。しかし首領パッチの戒めが解けないと分かるや否や、今まで聞いたことのない程の声量で破天荒を怒鳴りつけたのだ。




『ふざけんなよお前! そんなの、罪滅ぼしでヘッポコ丸を愛してやることにしただけじゃねぇか! そんな上辺だけの告白、ヘッポコ丸が喜ぶと思ってんのかよ!!』
『生憎だがなところてん。俺は別に罪滅ぼしなんかでこんなこと言ったんじゃねぇよ。俺なりに色々考えて、考えて考えて考えて考えて、出した答えなんだ。俺はヘッポコ丸を愛してやりたいと思ってる。あそこまで俺を一途に想ってくれてるヘッポコ丸を、俺は愛してやりたいんだ』
『っ……!!』




破天荒の真っ直ぐな言葉に、天の助は言葉に詰まっていた。正直言うと俺も驚いた。破天荒がそんな風に考えていたなどと、病室では明かされなかったからだ。



他のメンバーを見渡した。全員、破天荒を許してやることは出来ずとも、納得だけはしたみたいだ。破天荒の言葉にはなんら偽りは無い。嘘も滲んでいない。それが生半可な覚悟で放たれた言葉ではないことは、日の目を見るより明らかだった。




それに納得出来ていないのは――天の助ただ一人。





『…俺言ったよな。お前なんかに、ヘッポコ丸を任せられないって』
『あぁ、言ったな』
『その気持ちは今も同じだよ。お前みたいな最低な奴に、ヘッポコ丸は任せられない』
『………』
『何を考えて出した結論なのか知らねぇけど、結局は一時の罪の意識からきた瞞しの気持ちだろ。嘘臭いんだよ、お前の言葉なんて!』
『…んだとテメェ!!』





――もうそこからは語りたくもない。二人の力の差は歴然なのに、それでも殴り合いを勃発させてお互い息も絶え絶えになるまでボロボロになるまでフラフラになるまで拳をぶつけ合ったなどと、語って何が面白いものか。…ちなみに、制止は勿論全力でやっていたということは、備考として知っていてもらえれば良い。






「破天荒も破天荒だが、天の助も言い過ぎだ。破天荒が逆上するのも無理はない」
「破天荒には破天荒の、天の助には天の助の言い分がある。それをお互いに納得しないのならば、あのいざこざは無くならないさ」





ヘッポコ丸を愛すると決めた破天荒の想い。


親友だからこそ幸せを願う天の助の想い。





思うことに差違は無い。利害が一致しないだけ。根本的なところは同じなのに、考えが噛み合わない。故の諍い。解決にはまだまだ時間が掛かりそうである。





「ボーボボはどう思う? 破天荒の出した結論は」
「…そうだなー」




フルーツサンドの最後の一口を飲み込んでから、ボーボボは言葉を繋げる。




「破天荒がそう決めたのなら、オレは口出ししないつもりだ。ヘッポコ丸が目を覚ました時、まだ破天荒への気持ちが消えていないなら、いよいよ二人だけの問題だろう。オレ達はお役ごめんって感じだな」
「確かに…最終的な結論を出すのは、二人だからな」




破天荒とヘッポコ丸。




長い時間、破天荒に対する恋心に苦悩して、報われないと決め付けて、数え切れない程の涙を流していたヘッポコ丸。



長い時間、自分に向けられる恋慕を知らぬふりで貫き通し、それが過ちだと気付き、共に歩むことを決めた破天荒。





どんな枠に収まるかどうか、決定打が打てるのはこの二人の総意だけ。第三者が関われることなんて、実はもう無い。




本当は、破天荒が結論を出した時点で、決着までの行程を破天荒に一任するべきなのだ。しかし未だこうして様々な意見交換をしているのは、一任するにはまだまだ不安が残るからであろう。特にソフトンはかなりの時間、ヘッポコ丸の苦悩を見てきた。尚更、簡単には傍観者に徹せないのだ。




「今までのヘッポコ丸のことを考えれば、このまま付き合う方が良いのかもしれない。だが…天の助の言うように、ただ罪悪感からそうした結論を出したのだとしたらと考えると、俺は後押しして良いのか迷うんだ」
「まぁ…今まで知らないふりをしてきたわけだからな。それが齎(もたら)した結果を見てしまってから出された結論となると、躊躇はあるかもな」




ボーボボはヘッポコ丸の髪を撫でる。ヘッポコ丸の寝顔は穏やかだ。すぐにでも目を開けそうなものなのに、ヘッポコ丸はなかなか目を開けない。一体、この子はどんな夢を見ているのだろうか。夢の中では、既に破天荒と幸せになれているのだろうか。





そういえば…と、ソフトンはふと思った。


ヘッポコ丸が目を覚まさないことと同様、邪王もこの十日間姿を見せていない。出て来れない理由があるのだろうか。…確か、前に邪王が言っていたな。





『オレが[ヘッポコ丸]じゃなく[邪王]という確立した存在としてお前の前に現れられるのは、アイツが自然に意識を無くした時だけだ。眠ったりとかな。そうじゃないと、オレは[ヘッポコ丸]の枠を抜けられないのさ』





[邪王]として現れるための最大条件は、ヘッポコ丸が自然に意識を無くすこと。それ以外では、邪王は確立した状態で居られない。ヘッポコ丸の体を借りるしか方法は無い。



俺がヘッポコ丸を発見した時、既にヘッポコ丸の意識は無かった。あの意識消失は、自然に起こったものではない。失血のショックが引き起こしたものだ。だから邪王は[ヘッポコ丸]の枠を抜けられなかったのだ。きっと今もそういう理由なのだろう。


しかし、それならヘッポコ丸の体を借りることは出来そうなものなのに……あの状況下で、邪王が[ヘッポコ丸]として表に出られなかった理由とは、なんだったのだろうか。




「…ボーボボ、邪王の話は覚えてるか?」
「あぁ、例のヘッポコ丸の」
「十日前、俺は『彼』からのテレパシーがあったからこそヘッポコ丸を救うことが出来た。でも、今考えれば、それは不自然なような気がしてな…」




そう。テレパシーなどという不確かな伝達方法を用いて他人に――ソフトンに助けを求める必要はそもそも無い。意識が自然消失が無かったのであれば、『彼』が[ヘッポコ丸]として表に出て処置をすれば良いだけの話なのだ。



しかし、『彼』はそれがなんらかの理由で出来なかった。腕を切り、死への階段を突き進むヘッポコ丸を制止することが、『彼』には出来なかった。だから、ソフトンに助けを求めたのだ。『彼』が[ヘッポコ丸]として表に出られなかった理由など皆目見当もつかないが、しかし――あの日、一番歯痒かったのは、『彼』だったのだろうと思う。





一番近くでヘッポコ丸を見ていたのに、大事な時に『彼』はヘッポコ丸を救えなかった。きっと、『彼』は自分を無力だと蔑んだだろう。他人に助けを乞うしか出来なかったことが、どれだけ辛かっただろうか…。




「破天荒のせいで傷付き続けるヘッポコ丸を慰めること。それが『彼』の中での最重要事項だった。内傷は防げずとも、外傷を防ぐことも『彼』の役目だった」





外傷。つまり――自傷。





「しかしそれは叶わず、ヘッポコ丸は腕を切った…」





遂行すべき最重要事項。しかし破ってしまった自戒。






「俺は、『彼』がヘッポコ丸の意識を沈めて[ヘッポコ丸]としてそこに居るのを見たことがある。十日前も、同じようにやれば、結果はまた違ったかもしれないのに…」




腕に巻かれた包帯を眺める。血は滲まなくなったとは言え、傷口自体はひどく痛々しいものだ。その傷の数だけ、ヘッポコ丸は涙を流して傷付き続けたということ。腕の傷は一生残るかもしれないと、医者は危惧していた。





その傷ごと受け入れて、破天荒はヘッポコ丸を愛せるのだろうか――








「……ぅ………」
「……?」




微かに聞こえた呻き声。ピクピクと動くヘッポコ丸の瞼。目覚めの、兆候だ。





「ヘッポコ丸…!?」
「おい、ヘッポコ丸、聞こえるか…?」




また眠ってしまわぬように懸命に声を掛ける。すると、一度強く眉を寄せた後、ヘッポコ丸はうっすらとその瞳を開いたのだ。




十日振りの、目覚めであった。





「ヘッポコ丸…!」
「良かった…お前、十日間も眠ってたんだぞ」
「……とお、か? そんなに、眠って、たのか…?」




十日間眠っていたからであろう、ヘッポコ丸の声は掠れていた。しかししっかりと記憶もあり話せるという点で、ボーボボはホッと胸を撫で下ろした。



しかし…。





「とにかく、すぐに医者を呼ぶから、ちょっと待って」
「いや、呼ぶのは少し待ってくれボーボボ」




ソフトンは、立ち上がろうとしたボーボボを制した。訝しげにソフトンを見るボーボボだったが、ソフトンは視線をヘッポコ丸から外さず、言った。




「お前、邪王だな」
「へ…?」




確信めいたソフトンの問い掛け。ボーボボはその言葉に疑問符を浮かべたが、ベッドに横たわるヘッポコ丸はフッ…と薄く笑った。




「…ほんと、お前はすぐ、見抜いちまうよなぁ…」




その言葉が、肯定の証であった。




十日振りに目覚めたのは、ヘッポコ丸ではなく、邪王だった。







――――





ヘッポコ丸のためにと持ってきていたフルーツサンドと飲み物を与えると、邪王は幾分か体力と気力を持ち直したようだった。フルーツサンドをきれいに完食した邪王は、十日前のことを詳しく話し始めた。






ヘッポコ丸が腕を切ったのは、天の助が部屋を出てしばらくしてかららしい。ナイフを持ち、シャワー室に移動した時点で、邪王はヘッポコ丸がこれから何をするつもりなのか手に取るように分かった。だから、意識を無理矢理落とそうとしたのだが…ヘッポコ丸は、それをはねのけたらしい。

そんなことが可能なのかとソフトンは眉を顰めたが、ヘッポコ丸と邪王の力関係を考察すれば、邪王は所詮ヘッポコ丸の裏側なのである。裏は表に勝てない。だからヘッポコ丸は、邪王の意識沈下をはねのけることが出来たのだ。




そうなってしまえば、邪王は最早手出し出来ない。ヘッポコ丸が腕を切り刻む様を目に焼き付けてしまった『彼』は、すぐに己の生命力をヘッポコ丸に送り込み、その命を繋ぐことに専念したのだ。そしてその傍ら、ソフトンにテレパシーを用いて救援を求めたのだ。


ヘッポコ丸を救うために行ったエナジーアウト。極限まで命を削ったその反動から、こうして目覚めるまでにこれほどの時間を要したのだという。




「悪かったな、なんの説明もしねぇであんな風に助けを求めちまって」
「いや、あれほど切羽詰まった状況では、ああするのが精一杯だっただろう。それに、君は君で、必死にヘッポコ丸を守ろうとしてくれたんじゃないか」




ありがとう。ソフトンがそういうと、邪王はゆっくりと首を振って「そんなこと言われる理由は無い」と一蹴した。




「こんな有り様じゃあ、とても『救えた』とは言えねぇよ。オレの責任だ」




腕に巻かれた包帯を一瞥して、邪王は苦々しく言った。やはり邪王は、この傷を作る行為を止められなかった自分を責めているようで。




しかし、それはお門違いなのではないだろうか。




あんな状況下で、全てが恙無く終わるなんてことは有り得なかったのではないか。少なくともソフトンはそう思っている。たとえ永遠に残る傷痕が体に刻まれてしまったのだとしても、その命を必死に繋ぎ止めようと躍起になってくれた邪王の行いは、賞賛に値すると言っても良いだろう。結果論に縋ってしまって申し訳無く思うが、これで良かったのではないか。






その命があるのなら、まだやり直しは利くのだから――







「しかし、どうしてヘッポコ丸より先にお前が目を覚ましたんだ?」




ボーボボが当然の疑問を口にした。確かに、不可解ではある。だが、負ったダメージの大きさを考えれば、先に邪王が目覚めたのはもしかしたら必然なのかもしれない。



ボーボボの疑問に、邪王は「それは」と言葉を継いだ。




「ただ単にヘッポコ丸が目覚めることを拒んでるからだ。オレがナカで意識を取り戻した時点で、ヘッポコ丸は目覚めてた。だけど、現実…今は目覚めてなかった。オレが理由を問いただしても、アイツは何も話そうとしなかった。だから仕方無く、オレが先に出て来たのさ」




そうしてソトに出てみれば、十日も目覚めなかったという事実に直面した。その事実に邪王もすごく驚いたと言った。




「じゃあ、ヘッポコ丸はもう目覚めているのか」
「いつからかは知らねぇけどな」
「拒んでるということは…このままヘッポコ丸は意識を取り戻さないという意味か?」
「いや、オレがそれを許さねぇよ」




ボーボボが問い掛けると、邪王はニヒルな笑みを浮かべて言った。




「オレが無理矢理ソトに押し出してやるさ。まぁ…多分、コイツは失血のショックのせいで記憶が曖昧なフリをすると思う。けど、責めないでやってくれ」




アイツにとっては、本当はそうして忘れてしまいたい記憶なんだから。これからのヘッポコ丸の行動を予知するように邪王はそう言って、儚く微笑んだ。ヘッポコ丸を愁いているようなその微笑みは、邪王らしくなかった。



責めないでやってくれ。邪王のこの言葉に、ソフトンもボーボボもコクリと頷いた。それが拙い演技であろうとも、騙されたフリをしてやるのがせめてもの救いなら、しばらくはそれを甘んじて受け入れるつもりなのだ。




ホッと邪王が胸をなで下ろした。…その時に、ボーボボが「あ」と声を上げた。




「待て待て。忘れたフリをするなら、破天荒はどうなる」
「あ? あの男がどうしたんだ?」
「そうか、邪王は眠っていたから知らないんだったな」
「だから何をだよ」




訝しげに眉をひそめて問うてくる邪王に、ボーボボが順を追って説明した。破天荒の気持ちも、決意も、周りの反応も、包み隠さず話した。


それを静かに聞き終えた邪王は、ただ「そっか…」と呟いただけだった。




「忘れたフリをする必要なんか無いんだと、お前からヘッポコ丸に伝えてもらえるか?」
「いや…ヘッポコ丸には、黙ったまんまでいるよ」
「? 何故だ?」
「オレが明かす必要が無いからさ」




あの男の口から聞かされて、初めてヘッポコ丸は報われるんだ。邪王はそう言って、また儚く微笑んだ。しかしその瞳は、涙で潤んでいた。




「邪王…」
「良かった…これで、もうヘッポコ丸は泣かなくて済むんだな…」
「…あぁ。もうこれで、全てが終わるんだ」
「終わる…そっか。良かった…」




邪王は堪えきれなくなったのだろう、瞳からボロボロと大粒の涙を零し始めた。くしゃりと前髪を握り、涙を拭うこともせず滴り落としている。小刻みに肩が震える。落ちた涙がシーツを少しずつ濡らしていく。





そう――これで全てが終わるのだ。



本当に後押しして良いのか、状況はまだ微妙だ。だけど、今の邪王にそんな疑念を持たせたくなかった。





ヘッポコ丸の恋愛成就を誰よりも望んでいたのは、邪王なのだから――




「ありがとう、ソフトン…」




ポツリと、邪王がそう言った。涙に濡れて掠れて上擦っていたが、確かにソフトンの耳に届いていた。




「君に礼を言われることなんて、俺は何もしていないさ…」
「それでも、さ…お前には、色々感謝してぇこと、あるんだよ。素直に受け取れ、バーカ…」
「……そうだな」




ソフトンには、邪王の言葉の真意を諮りかねたけれど、強く問いただす必要は無いと判断し、それ以上何も言わなかった。





――感謝したいのは、こっちの方なのにな。





ソフトンは心中でそう呟いて、出掛かったそれを喉の奥で噛み潰した。





「はぁ…これで、オレの役目は終わりだな」




泣きながら、邪王は笑っていた。歪な笑顔だったけれど、邪王は確かに、笑顔だった。




「ありがとうソフトン。今までオレ達を支えてくれて、ありがとう」





継いで放たれた謝礼の言葉を、ソフトンは何も言わずに受け止めた。邪王は黙ったままのソフトンを満足そうに見つめて、また儚く微笑んだ。














――本当は、この「ありがとう」に「さよなら」が込められていたのだけれど。



ソフトンがそれを知るのは、全てが終わった後のことである。




























――――
流す涙に嘘は無い
the GazettE/BURIAL APPLICANT



→『涙』シリーズ第八話。仲間内の擦れ違い。邪王の言葉の意味。目覚めを拒むヘッポコ丸。これからの行動。終焉のため、彼らは動き出す…。

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ