自分同士で交わること。これは禁忌となるのだろうか。




オレ達は元々同じ人間で。


アイツは表で、オレは裏で。


しかし全く別々の思考を持っていて。



それでも自分同士であることに、変わりは無いのであって。










「っあ、ああ…!!」
「はぁっ…あっつー…」
「ふ、ぁ……んんっ」




グリグリと奥を抉ってやれば、ヘッポコ丸は一瞬歓喜の声を上げるけど、すぐに声を抑えようと掌で口を塞ぐ。恥ずかしいから聞かれたくないって前言ってたけど。




「なーに生意気なことしてんだよ」
「やっ…ちょ、邪王っ」
「抑えなくて良いんだよ。盛大に鳴け」
「バカっ…ひ、ああ、ああああ!」




両手をがっちり押さえつけて、そのまま勢い良く奥へ穿つ。声を抑える術を失ったヘッポコ丸は、高い声で喘ぐ。生理的に流れ出した涙が頬を伝い、シーツに小さなシミを作る。





オレが元々ヘッポコ丸だったからだろうか、コイツのドコを刺激してやれば良いのかってのは感覚的にすぐ知れた。ドコが一番感じるのか、ドコが弱いのか、手に取るように分かってしまう。



ということは、ヘッポコ丸もオレの弱い所が分かるのか? 考え始めると、心当たりが無いわけでもなかった。オレが初めてコイツに銜えさせた時、的確にイイところを刺激してきたのだ。まるで最初から分かっていたかのように、そこばかり刺激を与えるのだ。敢えて理由は尋ねなかったが、多分ヘッポコ丸にも分かるのだろう。漠然としたものだろうし、もしかしたら本人に自覚は無いのかもしれないが。





まぁともかく、オレはコイツをより喜ばせるための術を熟知しているわけだから。快楽に弱い節があるコイツは、ダイレクトに前立腺を突いてやれば簡単にイく。だからオレは敢えてそこを外す。




「ふ、ぅ…ぁ…邪王っ…」
「なんだ?」
「やだ…もっと、ちゃんとしてよっ…」
「やってんじゃん。ほら」
「んああ! や、そう、じゃなっ…」




わざと外されているのが分かってるんだろうな、もどかしそうに腰を揺らしながらヘッポコ丸が少ない言葉で訴えてくる。気持ち良いのは気持ち良いのだろうが、絶頂へ上り詰めるには決定打が足りないのだ。



オレはそれが分かってて、コイツが欲している刺激は与えてやらない。焦らして焦らして焦らして、焦らしまくるのがオレは好き。優越感味わえるからな。自分自身に優越感感じても…て誰かが聞いたら呆れるんだろうがな。




「なんだよ、今の快楽じゃ不満ってか?」
「んっ…分かってて、言ってるだろ…」
「さぁ?」




もう声を抑えようとはしないだろうと踏んで両手を解放してやる。お互いに手が自由になった。ヘッポコ丸は解放された両手をオレの首に回して抱き付いてきた。オレは右手で腰を抱き、左手で胸飾りを弄くる。物足りない快楽でも、胸飾りはしっかり立ち上がってました(笑うとこだぞ)。




「ひっ!」
「淫乱なヘッポコ丸くんは乳首だけでイケちゃうんじゃねぇの?」
「バ、カっ…ふ…そんなわけ、あるか…!」
「ふーん。まぁ、どっちでも良いけど」




オレがコイツをいじめることに変わりはないわけだし。強気発言も結構だけど、身体はそろそろ限界なんじゃねぇの?



胸飾りをなぶりながらチラリとコイツの自身を見れば、限界が近いのは明白だった。だらしなく先走りを零してふるふる震えてる。多分このまま追い討ちを掛けてやれば呆気なくコイツは絶頂を迎えるんだろう。そういえばまだ一回しかイかせてやってないし、そろそろ解放してやっても良いかなぁ。オレって優しい。




「お前が乳首だけでイケるかどうかは次の時に実験してやるよ」
「ハァ!? ふざけ…ひ、やあああ!」




オレの提案に抗議しようとしたところで待ち望んでいたであろう前立腺に思い切りオレを叩き付けてやった。いきなりの強い快楽に、ヘッポコ丸は一際高い声で鳴いた。見開かれた瞳からボロボロと涙が伝い落ちる。それを舌ですくい上げれば、塩辛い味が広がった。







目の前で乱れるコイツを愛おしいと思うのは、間違った想いなのだろうか。





オレ達は元々同じ人間で。


コイツは表で、オレは裏で。


しかし全く別々の思考を持っていて。




違う人間でありたいと思う。だけど所詮オレ達は二人で一人。この行為だって、自慰行為に近いのかもしれない。自分で自分を慰める愚かな行為。表と裏で慰め合う、愚かなオレ達。






ガツガツと、奥を抉るようにオレを叩き付ける。何度も何度もそうしてやれば、強い快楽に抗うように肩に爪が食い込んでくる。痛みはあるけれど、オレもコイツ同様快楽に溺れ始めていたから、この痛みだってすぐに気にならなくなるんだろうと何処か冷めた頭でそう思った。




「や、やだっ、邪王…ああ! ひぃ、ま、待って……!!」
「あ?」
「うあぁっ…は、げしぃ、って……あ、ああぁ!!」
「そりゃ結構。もっと鳴け」
「ひうぅ! あっあぁ、こ、この…鬼畜やろっ…!」
「サンキュー、褒め言葉」




もう前は先走りでドロドロ。グチャ、グチュ、と卑猥な音を奏でる後ろはオレを締め付けて絡み付いて、言葉とは裏腹に身体はすっごく正直。激しいのが嬉しいんだ。鬼畜に振る舞われるのが好きなんだ。






――こんなオレを、お前は好きでいてくれてるのかな…。






「はっ……わりぃ、もうオレ限界なんだけど…」
「あ、うぅ…! …い、いよ…はやく、ちょうだい、邪王っ…!!」
「っ…全く、テメェは本当によぉ…!」




あぁチクショー、コイツが愛しくて仕方無い。愛してる。愛してるんだ。オレは自分自身を…ヘッポコ丸を愛してる。誰にもやりたくない渡したくない渡してなんかやるもんか!




回された腕に一層力が篭もった。それに応えるようにオレはグッと腰を引き寄せてグリッと中を勢い良く擦ってやった。そうするとヘッポコ丸は声にならない声を上げた。ちょうど前立腺を抉ったから、さぞ気持ち良かったことだろうよ。絶頂はすぐそこまで迫っているだろう。すぐイかせてやるよ。




「ひぃんん…!! あっあぁ……お、ねが、邪王…!!」
「ああ…」
「うあっああ……おねが、チューして…んあっ、邪王…!」
「………」




ここに来てキスを強請るか。全く、可愛い奴だなお前は。



お望み通りキスを送ってやった。しかもとびきり濃厚な奴。グチャグチャと舌を絡めて擽ってやれば、拙いながらもコイツも舌を絡ませてくる。与えられる快楽に抗うが如く、キスにのめり込む。




キスをしながらも、律動は緩めない。ラストスパート、って感じで、前をいじりながら前立腺を勢い良く潰してやった。キスに夢中になっていたヘッポコ丸はその刺激に目を見開き、声にならない喘ぎ声を上げてイった。その反動からくる締め付けに耐えられず、オレもコイツの中に欲望を吐き出した。




――――




「もう絶対邪王としない…」
「お前それ毎回言ってるけどヤってんじゃん」
「それはお前がいきなり押し倒してくるからだろ!」
「そうだよな〜淫乱なヘッポコ丸くんは触られたらすぐその気になっちゃうもんな〜」
「っ〜〜〜!!」





色気もへったくれも無いピロートーク。新しく替えたシーツに身を沈めて可愛げの無いことを言うヘッポコ丸だが、コイツは流されやすいし快楽に弱いから、その気にさせんのは意外に簡単。最終的にはコイツも悦んでんだし、結果オーライなんじゃねぇかとオレは思う。




「別に良いじゃねぇか。オレに抱かれんの、お前結構好きだろ?」
「なっ!! う、ううう五月蝿い馬鹿!」
「どもりすぎ」




それじゃ肯定してんのと一緒だっての。




「オレは、お前を抱けんのは幸せだぜ。お前がオレの表の存在でも、オレはお前が好きだ」




チュ、と剥き出しの額に小さな口付けを落とす。ヘッポコ丸は恥ずかしそうに頬を染めて「バカ…」と呟くが、それが照れ隠しからくる言葉なのは知ってるから。



よしよしと頭を撫でて、布団を掛け直す。お互い盛り上がったせいで疲労困憊だ(あの後三発もかましたし)。ヘッポコ丸の目はとろんと眠そうに下がっている。寝ることを促すように向かい合って肩を抱くと、ヘッポコ丸はふにゃりと笑って目を閉じた。すぐに規則正しい寝息が聞こえてきて、それを追うようにオレも目を閉じた。













これが例え禁忌でも構わない。



コイツを愛せるのなら、神だって殺してやるよ。



















――――
君と僕は共犯者
Alice Nine./RAINBOWS

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