「咲人ってホントSだよな」
「は?」




今日は雑誌の取材と撮影の仕事。メンバー全員での撮影はもう終わって、今は個人撮影の真っ最中。今は柩が撮ってるから、オレ含む四人は順番待ちで待機中。ゾジーさんと瑠樺さんはお腹空いたからって近所のコンビニへ行ってしまった。だから今楽屋にはオレと新弥しか居ない。



で、暇潰しにモンハンしてたら新弥の冒頭の言葉を投げ掛けられたってわけ。あまりに突拍子、且つ意味不明な言葉だったから瑠樺さん並みにポカンとなっちゃった。一体なんなんだこのエラ。




「いきなり何?」
「や、ふと思ったから」
「ていうかそんなの今更じゃん」




そう。そんなのは今更過ぎる愚問。オレがSなんてのは周知の事情だし、巷じゃあ『ドS王子』なんて異名がついてるぐらいだ。ましてや長い付き合い(メンバーとしても、恋人としても)なんだし、再認識する必要なんて無いと思うんだけど。




「なんでまた今更?」
「だってさー、咲人さっきゾジーに…」
「さっき?」




さっき…さっき…………あ。














〜〜回想〜〜





「咲人! ちょっと瑠樺さんとコンビニ行ってくる!」
「ぬ」
「別に良いけど、お菓子ばっか買うなよ。またデブるよ」
「か、買わないし! そんなすぐ太らないもん!」
「うるさいよ子豚ちゃん」
「…う、うわーん瑠樺さーん!」
「おい、あんまゾジーいじめんなよ」
「うるさい顎無し」
「…う、うわーん!」





〜〜回想終了〜〜





ってなことがあったっけ。あの時の二人の泣き顔マジ最高だったなぁ。




「咲人、顔がニヤけてる」
「おっと」




マズいマズい、思わず表情がふやけちゃった。でも今思い出しただけでも笑えちゃうしなぁ…ククッ。





「そうやって思い出し笑い出来るあたり、咲人ってホントにSなんだなって思うよ」




そう言う新弥の顔は、笑っているような、呆れているような、なんとも複雑な表情だった。なんかムカつく。何でムカつくかなんて説明出来ないけど、ムカッときたのは確か。




なになに、オレがSなのがそんなに不満? それとも…




「何? いじめてほしいの? 新弥」




そう言って新弥を押し倒してあげれば、見て分かるほどに顔が赤く染まっていった。そしてそれを見られたくないからかフイッと顔を逸らした。あれれ? もしかして図星だったりする?



クスクス、笑みが零れる。チュッと首筋に唇を落とせば、ビクリと体を震わせる新弥。あは、可愛いじゃん。




「咲っ…」
「遠回しに誘ってたりするの?」
「べっ別に誘ってないし! …ただ……」
「ただ?」




その…あの…と言い倦ねて言葉を濁す新弥。視線もキョロキョロと定まらない。ちょっとちょっと、オレ、焦らすのは好きだけど、焦らされるのは嫌いなんだけど?




「ただ、何? 言ってくんなきゃ分かんないよ」
「……って…」
「ん?」
「だって…咲人、はゾジーさんや瑠樺さんは弄っておきながら、おれを構ってくんなかったから…」
「だから?」
「〜〜〜っさ、淋しかったんだよ! バカ咲人!」
「…へぇ」




なるほどなるほど、新弥くんは淋しかったのか。自分だけ弄られなかったのが淋しかったのか。じゃああの突拍子な発言も、ただオレの気を引きたかっただけで、ゾジーさん達のことを引き合いに出したのは、どうしてその時自分も弄ってくれなかったんだっていう卑屈も篭もっていたんだろうか。




一人蚊帳の外。新弥はそれが淋しかっただけ。でも、だからっていじめてほしいとか、自分でアピールする必要なんて無いだろうに。やっぱ新弥ってMだよね。





「構ってほしかったなら素直に言えば良かったじゃん」
「自分から構って、なんて恥ずかしくて言えるかっての」
「どうだか。その恥じだって快感になっちゃうんじゃない? 新弥なら」
「うぅ…咲人のいじわる…」
「お生憎様、オレ、ドSだから」




で、新弥はそんなオレにいじめてもらえて喜んじゃうドM。




「相性ピッタリだね、オレ達」
「今更気付いたのかよバーカ」

















――――
磁石な関係
アンティック-珈琲店-/Bonds〜絆〜

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