LOVE ME TENDER
□約束の証
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本当はな
あの銀時計の蓋を鍛ち直して、指輪を作ろうと思ってたんだ
だけど
気づいたらもう、手元にはなく
どこかにいってしまっていた
でも
かたちあるものがなくなったとしても
記憶や、感情
抱いた思いはきっと変わらない
そう思うんだ
Don't forget
忘れるな
かたちをなくした
かたちある日々を
決して忘れてはいけない
受話器をおいて大通りの角を曲がると
電話ボックスの中に
弟の、はにかんだ笑顔があった
俺は呼吸、ひとつしてから
電話ボックスのガラス扉を二度叩いた
中央の
喧騒まじりの薄色の青空は
今日も高く澄み渡る
羊雲を
ゆっくり右へと動かしながら
―END―