memento mori _We Are Ghost Hunters!!_(オリジナル小説)

□二、
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「と、いうわけで」
どういうわけだ?
「ここのリーダーのようなものをしているキリヤマミコトだ」
レッドがマスクを脱いだ。
その中身は案外綺麗なもので、女と言われても、信じてしまいそうな顔つきをしていた。
なんか、声も微妙に高いし。
ただ、髪型がなんか凄いな。
いや、悪くは無い。
むしろこの男はこの髪型でいい、そう思ってしまうような変な説得力がある。
でも、聞いてみたくもなってくるな。
それ、寝癖ですか?って。
「…さて、早速だけど、君に仕事を頼みたい」
「いや、早速過ぎるだろ。
幾らなんでも」
「ここ迄の前降りが長かったからね。
そろそろ、読者も飽きてくる頃だろうし」
「それには同意だが、他の仮面着けてる奴らの紹介ぐらいしてくれよ」
何故かメイドのコスプレをしているピンク。
前面に『岩男』と楷書で書かれたTシャツを着ているブラック。
裸の上半身に、『今日の主役』と書かれたタスキをかけている、明らかに目立ちたがりなイエロー。
一人だけ普通なブルー。
服装を見るだけでも、かなり個性的な連中だということがわかる。
気になって仕方がない。
「ああ、彼らか。
彼等はただの…」
「ただの?」
「モブキャラだよ。
みんな、お疲れ様。
もう出番無いから、帰ってもいいよ」
「「「「お疲れ様っしたぁ!」」」」
モブキャラマジギレ。
なんか呪文っぽいな、この文。
「いや、本当に帰らないでよ。
冗談だって、冗談」
モブキャラ達を必死に引き止めようとするキリヤマ。
こんな奴の下で働けるのか?俺。

「え〜、改めまして」
こほん、と、小さく咳払いをして、キリヤマがメンバーの紹介を始める。
「まず、僕の隣りにいる、羨ましい身長をしている女性。
彼女は井上舞。見た目通り普通だ」
確かに身長の高いブルー。
いや、井上舞。
マスクを取ると、こちらもやはり、普通と呼ぶのが相応しい顔が晒される。
俺には、つい人の顔や見た目を観察してしまう癖がある。
そのせいか、初対面の人には、よく色々な勘違いをされる。
例えば、こんなふうに。
「井上舞です。
よろしくね。
…?
………あの、私、顔に何か付いてる?」
俺は慌てて視線を外す。
それがまた、怪しいんだろうが。
…兎も角、これが正しい反応である。
まさに普通。
合格点。
「そのさらに隣り。
どう見ても目立ちたがりな男が…」
「どぅるるるるる…」
微妙に上手い口ドラムロールをイエローが刻む。
見てて、無性に虚しくなってくる。
「るるるるるる……デン!」
デン!の音と同時にイエローが素早くマスクを脱ぐ。
練習したんだろうな。
お疲れ様。
「本日の主役、柳田マイケルでぇっす!」
「ご覧頂いたように、彼はウザイ。
兎に角ウザイ。
ウザイったらありゃしない。
取り扱いに注意だ」
せめて、突っ込んでやれよ、と思わなくもない。
確かにウザイが。
「次。
そこのロックなやつ」
岩男Tシャツを着たブラック。
黒い仮面に手を掛け、
なんと、仮面を破った。
「Rock」
いや、そんなドヤ顔で言われても。
わざわざ、一文字目を大文字にしなくてもいいですよ。
「ご覧の通り、彼はRockだ。
以上。
それでは次」
もう、名前すら紹介されていない。
幾らなんでも、この上司、部下の扱いがぞんざい過ぎないか?
こんな扱いでも、全く反論が出ないあたり、いつもの事なのだろうか?
「一見萌えキャラな彼女」
メイド服で、ちっこくて、ピンク。
確かに萌えキャラと呼べる要素を満たしている。
「彼女は、その…」
ポンと、キリヤマの肩を、彼女の小さな手が叩く。
心配ないよ。
そう、言っているかのようだった。
ピンクの仮面を取って、露わになったのは、またピンクだった。
髪が桃色なのだ。
顔も、まるで人形のよう。
まさに、萌えキャラだった。
ただ、可笑しなものを首から下げていた。
朝の光景がフラッシュバックする。
『空気』
そう、ホワイトボードを首から下げていたのだ。
備え付けのマジックで、キュルキュルと、文字を書いていく。
そして、ずい、と眼前にホワイトボードが差し出された。
『あたしは電波ちゃんだ。
よろしくな、おっさん』
で、電波ちゃん?
自分にちゃん付け?
ってか、おっさんですか。
俺、おっさんですか。
それじゃああんたはなんさいですか?
「その、こういう子なんだ。
変だと思ってもいいから、仲良くしてやってくれると嬉しい」
『そんな目であたしを見ないで……
照れるだろ』
まあ、取り敢えず冗談は通じそうだった。
これで、全員か。
まだ、よくはわからないが。
なんだか、悪い感じはしない。
これから、こいつらと、俺は働くわけだ。
「あ、そういえば、君の名前を聞いていなかった。
君も皆に自己紹介を頼む」
だが、その前に。
俺には大きな障害が待ち受けているらしい。
ボロ屋の中が、爆笑で溢れかえる迄。
あと、秒読み、10、9、8、…

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