cry (オリジナル小説)

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取り敢えず、眼を開けてみた。
木製のオンボロ屋根が霞んでいる。
今にも落ちてきそうで怖い。
チュンチュン
小鳥の鳴き声、かもしれない。
少し寒いな。
窓が空いているのか、それとも隙間風か?
床に手のひらを着けてみる。
ひんやりと、気持ちがいい。
少し腕に力をいれてみる。
意外と力は強いみたいだ。すんなりと身体が持ち上がる。
首を回してみる。
ぱき、ぼき。
…折れたり、しないよな。
次は足。
バキリ、ボキシ。
少し動かしただけで、凄い音がする。
自分はどうやら、年寄りらしい。
一通り点検は終えた。
今度は探検だ。

意外とこの家は広いようだ。
一階建て、部屋が数えきれない程度。
……自分の家、なのだろうな。
自分が言うのもおかしなことたけど、懐かしい気がする。
そんな事を考えながら、自分はまだ開けていないドアのノブに手を伸ばす。
『浴室』
錆びたドアプレートにそう書いてある。
変だな、文字は読めるなんて。
誰かが入っていたりしない、よね?
一応、ドアに耳を当ててみる。
………
音がしない。
思いきって、ノブを回して、扉を開ける。
そこは、本当にただの浴室だった。
特徴があるとすれば、他の部屋と比べたら、やけに綺麗だということと、あと、大きな鏡が硬そうな壁に貼り付けてあるくらい。
あっ、そうだ。
鏡を見れば、自分の姿を確認出来る。
少し怖いけど、やっぱり気になる。
だから、目を閉じて鏡の前に立つ。
このまま開けない方が幸せでいられるかもしれない。
でも、そんな幸せは、少し悲しい気がする。
…いつまでもウジウジしてないで、いい加減、目を開けよう。
「え、?。」
つい、声がでてしまった。
鏡に映ったのは、年老いた老人ではなく、あどけなさを残す子供だったからだ。
「はぁ…。良かった」
赤色の髪が目を引く。
女にしては少し短いけれど、男にしては長い。
意外と整った髪型だった。几帳面だったのか?
真っ黒な目。
髪との違いが激しくて、これまた目を引く。
まつ毛は長いけれど、目つきは鋭い。
鼻。
低い。
唇。
薄い。
体格は、割と健康そうだ。
背は、…どうだろう?
変な模様が大きく入っている、だぶだぶのシャツを着ているようだ。
お世辞にも、センスがいいとは言えないだろう。
子供というのは、わかった。
では、自分は男なのだろうか?女なのだろうか?
着ている服は、男物のようだけれど、それだけでは判断出来ない。
顔だけ見れば、女にみえなくもないし。
あっ、そうだ。
…ごそり。
………うん。やっぱりそうか。
自分は男で間違い無いようだ。
だとしたら、自分という一人称はおかしいか。
…俺?….…なんか、恥ずかしい。
僕?………もっと恥ずかしい。
まぁ、暫くは自分でいいか。
さて、自分の姿についてはわかった。
それで、
自分はこれからどうすればいいのですか?
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