オリジナル

□朝の蛍
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「蛍だ。」
違う。
「……魂か?」
それも違う。
 何でもない、形なんてない小さな光が、僕の周りを舞う。
 一つだけ。速く動いて、ゆっくり動いて、はねて、またゆっくり動いて。僕の目の前に降りてきた。


――――そこで僕は目を覚ます。
「夢…だったのか」
 小さく呟いて、ベッドから出る。部屋は少し暑いくらいだ。夏の初め。花びらは落ち、緑の新芽が顔をだす。うすくかいた脂汗を洗ったばかりのタオルで拭き取り、時計を見た。
「…6時」
僕にしては早起きだった。登校時間まであと2時間も余裕がある。
 買って間もない靴のかかとを引っ張る。つま先を地面にたたき付け、戸を開けた。
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