ラプンツェルの後ろ髪

□No.9
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やぁ、お帰り、アリス。


・・・そう嫌そうな顔をするなよ。


私だって、君を愛していると、言っただろう?


それとも君は、私を望んではくれないかい?


だとしたら妙だ、


・・・此処には、君が望むモノしか存在出来ない。


私が此処に居る事が、君が私を望んだ証拠。


・・・嗚呼、頼むから、あんな帽子屋の方が良かったなんて、言わないでおくれよ?


私はアレとは仲が悪くてね・・・


・・・おや?、アイツは名乗らなかったのかい?


君が一番良く出会う男さ、


アイツは、此所では帽子屋だ。


私は、・・・そうだな、此所では、悪い魔法使いと言った所だろう。


本来、アリスと私は出逢えない。


君はアリスで、私は魔法使いだからね。


「不思議の国のアリス」には、魔法使いは出て来ないだろう?


・・・だけど此所では、君と出逢える。


君はアリスで、ハートの女王で、シンデレラ・・・


白雪姫に、


ラプンツェル、


君が望めば、何にでもなれる。


お姫様、魔法使い、町娘、何にでもなったら良いさ。


どんな君でも、私は愛そう。


可愛いアリス。


一人ぼっちは寂しいかい?


ならば、想像したまえ・・・?


私が一つ呟けば、


君の服はピンクのドレスに


私が二つ呟けば、


街はお菓子で埋もれてしまうさ


さぁ、アリス。好きなお菓子を食べると良い。


そして、食べる事に飽きたなら、


私と一曲踊るとしよう。


きっと、とても楽しいさ。


嫌な事など忘れてしまうよ。


私が忘れさせてやろう。


さぁ、踊ろうアリス。


遊ぼうアリス。


君が望むままに。


なんなら、他の奴等も呼ぼうじゃないか。


今日はサービスだよ、アリス。


明日の私は、こんなに優しくなどないさ。


此所で唯一、君に優しくない男。


だけど君は、私を拒む事など出来ないよ。


痛む傷に、触れる私に、君は一度、心を許した。


君は拒めない、痛みの中にある、甘美な絶望を知ってしまったのだから・・・。


愛しいアリス、可愛いアリス。


全てを失ってしまえば、もう傷付く事は無い。


君はそれを、知っている。


だから私を拒めない。


臆病で泣き虫な、可哀想なアリス。


さぁ、アリス。


全て忘れさせてあげよう・・・


終わる世界を、


見たくはないかい?


愛しいアリス、可愛くて可哀想な、私のアリス。

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