桔梗と龍
□約束
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翌朝、私はボンヤリしながら着物に着替える。
昨夜・・・社を見つけて帰れる手掛かりが見つかったのに、何でこんなにモヤモヤしてるんだろう。
鏡を見ると着物姿の自分が写る。
初めは着物なんて着れなかったのに、今では一人で着れてその姿にも見慣れてしまった。
・・・それだけここの生活に馴染んだんだよね。
私はパンっと両手で自分の両頬を叩くと部屋を出た。
台所に行くとお登勢さんとおシゲさんが慌ただしく朝餉の準備をしている。
「おはようございます。」
私はあいさつすると器にご飯や味噌汁を盛り付けていく。
「千春ちゃん、このお漬物切っといてくれる?」
「はい。」
私はお登勢さんに言われた通りに手際よく漬物を切り、盛り付けていく。
元の時代にいた頃は包丁を握って料理なんて全くしなかったな。
でも、今では教わったり見様見真似で一通りの事はできるようになった。
「手際がよくなったわね。」
お登勢さんが目を細めて笑う。
「ほんま!最初はなーんも出来なくて驚いたけど!」
おシゲさんが楽しそうに笑う。
「おシゲさんっ、私だってお米くらいは研げましたよ!?後は野菜の皮むきとか・・・。」
「あはははっ!そうだったわねぇ。」
声をあげておシゲさんが笑うと、お登勢さんが、
「なんだかすごく懐かしく感じるわ。」
と優しく微笑んでくれた。